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きようという気になるという物。それを自分で行うための力を得るのは悪くない、と俺は思っている。
「その腕を見込んで頼みたいことがある」
キリトはトレードウィンドウの窓を可視化させてアスナに向ける。アスナはそこに表示されたアイテム名を一瞥した瞬間に、眼を丸くする。
「うわっ!!こ、これ、ラグー・ラビット!?」
アスナは驚きの余り、腕を震わせている。そりゃそうだ。S級なんてめったにお目にかかれるもんじゃない。以前一度だけ食したことがあるが、あれはまさに天にも昇るといって差し支えない旨さだった……。
「そうだ。コイツを料理してくれたら、一口食わせてやる」
「キリト、流石にそれはケチすぎるぞ。せめて半分はやらないと、料理する側としては割に合わない」
「うっ……」
「そうね。確かに料理スキル上げるの大変だし、半分くらいはもらってもいいよね?」
「……わかったよ、半分な」
はぁ、と溜め息をつくキリト。お前どれだけ食いたいんだよ、と内心突っ込むが気持ちは分からんでもない。
「ってエネバはどうするんだ?」
「んー俺か?別にいいよ。一回だけ前にS級食ったことあるしな」
恐らく先ほどの分配についての話なのだろうが、アスナのことも考えると、俺はお邪魔だろう。いつもの日課をするにも結構な時間をかけるし、そろそろ帰る頃合いだ。
「ま、そういうことだよ。じゃあ、お二人さん俺はここらで。あ、そうそうアスナ、悪いけど俺は何度勧誘されてもギルドには入らないと伝えといてくれ」
「あ、うん」
「そいじゃあな」
俺は自分のホームタウンである第四十九層主街区《ミュージェン》へと帰還した。石造りの街で、クリスマスの時には、街のシンボルでもあるツリーに見事なイルミネーションが設置された。当時そこが最前線だったのでカップルも多かったみたいだが悲しいかな、俺はそんな相手はいなかったので一人で自棄になってレベリングをしていたというつらい記憶がある。
俺はここに自宅を、半年ほど前に購入した。もともと家を買うことは俺の中ではそんなに優先度は高くなかったのだが、一年以上前に起きた事件をきっかけに購入せざるを得なくなった。その間、《彼女》には多大な負担をかけてしまったが……事件当時はまだ中層プレイヤーの中でハイレベルという評価に留まっていた俺が家を買うのは厳しいことだと、納得してくれていたが、同時に深く恐怖もしていただろう。俺が帰ってこないかもしれない、と。
最早慣れた道のりをスイスイっと歩いて、自宅に帰る。少しだけ広めの、二人で暮らすにはちょうどいいくらいの部屋の大きさだ。
「ただいま」
「あ、おかえりなさい」
この掛け合いが出来るようになったのも、俺が家を買ってからだ。それ以前はもっと別の(といっても宿屋やNPCから
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