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「な、なによ」
アスナはいきなり手を掴まれたことで上体を引いているが、その手を振りほどいてはいない。このことからも彼女がキリトに対して好意的なことが分かる。まあわざわざこんなスラムっぽい場所に来るくらいなのだから、それだけでもよく分かる。
このアスナという女性プレイヤーは、恐らくSAOの中でも最も有名なプレイヤーの一人だろう。
有名な理由は、様々だが……まず、SAO世界において圧倒的に少ない女性プレイヤーであるということ、もう一つ文句のつけようがないほどの美人であるということ。
さらに、彼女の着ている白と赤の騎士装は攻略組の一角でもあり、最強ギルドとも言われている《血盟騎士団》のユニフォームで、彼女はそのギルドの副団長を務めている。
もちろん、本人の剣技の冴えも素晴らしく、正確無比で優美なその細剣術は《閃光》の異名を頂いているほどである。
つまり彼女は剣技、容姿において現在アインクラッドに生存する約六千人の頂点に位置する存在であると言っていい。むしろそれで有名にならない方がおかしいというものだ。
そんな彼女だがそれなりに気苦労もあるようで、たいていの場合、彼女には複数の護衛プレイヤーが付き従っており、現に今も二人の護衛が一歩引いて立っている。ことに右側に立つ長く油っぽい髪を束ねた男の方は、手を握ったキリトと呼び捨てにした俺に対して憤怒の形相を浮かべている。
それに気付いたキリトは、ソイツに向かってひらひらと手を振ってから自分を呼んだ声に応じる。
「よう、アスナ。珍しいな、こんなごみ溜めに顔を出すなんて」
ごみ溜め扱いされた店主も顔を引きつらせるが、そちらの方はアスナが「こんにちは、エギルさん」と軽く挨拶しただけで、だらしなく頬を緩ませる。現金な奴だ。
「もうそろそろ、次のボス攻略だから、生きてるか確認しに来てあげたんじゃない」
「フレンド登録してるんだから、それくらい判るだろ。大体フレ登録してるからマップ追跡出来たんじゃないのか」
「まあまあキリト、それを言うのは野暮ってもんだ。なあ、アスナ」
「うっ、えっ、うん、そうだよね!」
突如話題を振られたアスナは動揺していたが、何とか平静を取り戻したようだった。まあ一応彼女から何回か相談を受けたりもしたので、彼女が何を考えて想っているのか俺は知っている。
「そういえばさっきシェフがどうこうって言ってたけど何のこと?」
「ああ、そうだ。アスナ、今料理スキルどのへんくらい?」
その質問を聞いた瞬間、アスナはきょとんとしたが、すぐに不敵な笑みを浮かべて、コンプリートしたことを告げた。
それを聞いたキリトはアホか、みたいな顔をしていたが、俺から言わせてみれば娯楽のために努力するのは必要なことだ。生死のかかった世界の中で楽しみがあれば生
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