第十話 決して埋まらない溝
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吹き飛ばされるなどの大怪我をしても入渠すれば傷は癒えますカ?燃料や弾薬を補給出来ますカ?それさえ摂取すれば普通に食事をしなくても生きていけますカ?」
立て続けに放たれた質問。
人間は艤装を付けることも出来ないし、船に乗らなければ海の上を自由に走れない。
深海棲艦に傷も付けられないし、深海棲艦の攻撃を喰らったら間違いなく死ぬしかない。
入渠してもかすり傷すら治らないし、燃料や弾薬も食べれず、普通の食事をしなければ生きていけない。
どれもこれも、凰香を除いた人間には『不可能』と答えるしかできない。
「……ホラ、ワタシたちと貴女はこれだけ違うんですヨ」
そう呟いた金剛は小さく息を吐く。そして生気のない眼を再び凰香に向け、こう呟いた。
「……たかが『人間』風情と、艦娘たちを一緒にするんじゃねぇヨ」
その言葉に、凰香は何も言い返せない。言い返そうと思えば言い返せるのだが、言い返すための言葉が見つからなかった。
それは時雨達もおなじであった。
「あ、テートク。明日合同演習を行うから、工廠近くの港に来てくださいネー。では、失礼しマース」
何も言わない凰香に思い出したかのようにそう言った金剛は、クルリとあちらを振り向いて速足に去っていった。
その後を追う加賀は凰香と金剛を交互に見ながら、凰香に一礼だけして廊下の向こうに消えていった。
「凰香さん………」
その場に残された凰香に夕立が心配そうに声をかけてくる。
「……今日はもう部屋に戻ろう」
凰香は気にした様子なく、いつも通りの無表情で夕立達にそう言う。
夕立達は凰香の言葉に頷き、凰香達は部屋に戻る。
そして凰香は着替えることなく、ベッドに横になった。
凰香の隣には時雨が、向かいのベッドには榛名と夕立が横になる。防空棲姫は以前のように椅子に座って眠り始めた。
全員が眠りについたとき、凰香はポツリとつぶやいた。
「……なら、あなた達は人類を護るべき艦娘に家族と友達を殺された私の気持ちがわかるって言うんですかねぇ?」
その声は凰香から失われたはずの感情『憎悪』が篭っていた。
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