第十話 決して埋まらない溝
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俯いた。
「……加賀、『伽』はするなとあれ程言ったはずネ。これに関しての処遇を決めますカラ、この後すぐにワタシの部屋に来てくだサイ」
「……はい」
「では、これにて失礼しマース」
先ほどよりも低い金剛の言葉に加賀が小さくつぶやき、それを確認した金剛が何事もなかったかのようにそう言って歩き出す。
それを見た凰香はすぐに金剛を呼び止めた。
「待ってください」
「……何ですカ?」
凰香に呼び止められた金剛が立ち止まるも、こちらに振り返ようとせずにそう言った。
横に付き添う加賀は俯きながらも金剛と凰香を交互に見ており、時雨敵意を滲ませた眼で金剛を、榛名と夕立は心配そうに凰香を見ていた。防空棲姫はこの状況を静観している。
そんな中、凰香は口を開いて金剛に確認した。
「『伽』は、あなたがが命令したことですか?」
「……違いマース。加賀が勝手にしでかしたことデース。まったく、困ったものですヨ」
金剛はこちらを振り返ることもなく砕けた口調でそう言い、肩をすくめるジェスチャーをする。
凰香が加賀に視線を向けると、加賀は凰香を見て申し訳なさそうに頭を下げてきた。
この反応を見る限り、加賀が独断で行ったと見ていいだろう。
凰香はさらに金剛に聞いた。
「もう一つ、食堂のあれはあなたが指示したことですか?」
「ハイ、そうですヨ」
金剛が躊躇することなくそう答える。
それを聞いた凰香は視線を鋭くして聞いた。
「なぜですか?あれは前任者が強いた体制です。前任者がいなくなった今は続ける必要などないはずですが?」
「簡単デース。ワタシたちは、『兵器』だからデース」
凰香の言葉に金剛が躊躇うことなく即答する。
それを聞いた凰香は金剛に言った。
「へぇ、あんな地獄みたいな状況を強いる必要があるというのですか。戦場の食事によって自軍の士気を容易く変えられる。それがどれほど重要なことか提督代理のあなたなら分かっているはずですが」
凰香の言葉に、金剛は一切反応しない。一切微動だにせず、彼女は凰香の言葉を背中で受け止めるだけであった。
「大体、あなた達はただの兵器ではありません。ちゃんと意思を持って動く人間と同じ『艦娘』です。だから――――」
「テートク」
凰香の言葉は、金剛がこちらを振り返った際に発した一言によって掻き消された。
金剛は生気のない、暗く冷たい眼で凰香を見ながら言ってきた。
「貴女達たちは、艤装を付けることが出来ますカ?海の上を自由に走れますカ?深海棲艦に傷を付けられますカ?奴らの攻撃を喰らっても生きていられますカ?手足を吹き飛ばされても砲撃を続けられますカ?手足を
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