第十話 決して埋まらない溝
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
のときと比べ物にならないほど熱く、今にも噴き出しそうなほど煮えたぎったどす黒いものであった。
それはどんどん大きくなっていき、全身を満たしていく。それに呼応するかのように右腕の赤いオーラが噴き出していき、籠手の隙間から漏れ出していく。
それに対して頭はどす黒いものを抑え込むほど非常に冷静であった。
「これを命令したのは誰ですか?」
凰香はもう一度加賀に問い掛ける。頭の中で徐々に増えながら回るそれを向ける先を。恐らく、一度暴発すれば人を殺しかねないほど溜まりに溜まったそれを向ける先を。
加賀は凰香を凝視しながら、フルフルと顔を横に振った。その際に涙が四方に飛び散り、凰香の服を濡らす。しかし今の凰香はそれを気にすることはない。
「前任者ですか?」
凰香の問いに加賀の目に更に恐怖が映る。ビンゴと見ていいだろう。
しかし前任者は今ここにいない。つまり、今現在鎮守府に所属している誰かが彼女に命令したことになる。
「あなたに命令したのは誰ですか?」
再度同じ質問を加賀に投げ掛ける。しかし、加賀はまたもや首を横に振るだけであった。
このままでは埒があかない。聞くだけ無駄である。
そう判断した瞬間、凰香の頭に一つの仮説が頭の中に浮かんできた。
榛名や夕立の話や加賀の様子を見るに、伽の件や食堂の件は前任者が強いた体制である。
それを強いた前任者はとうの昔に消え去っている。それにもかかわらず今現在でもそれが続けられている。つまり、前任者と同じ権力をもった何者かがこの体制を強いているのだ。
では、今現在前任者ほどの権力をもった何者かは一体誰か。
まず人間ではない。ここには凰香以外の人間がいないまらだ。
ここにいるのは艦娘ばかり。つまり、艦娘の中にその何者かがいる。
『Hey、テートク。ワタシ、この鎮守府でテートク代理をしている金剛デース。よろしくお願いしマース』
ふと頭の中に過った言葉。
その瞬間、抑え込んでいたどす黒いものが爆発した。
「……なルほどォ、金剛サんですカぁ」
「ヒッ……!?」
凰香の絶対零度に凍える声に加賀が引きつった悲鳴を漏らし、凰香から飛び離れる。
身体が自由になった凰香は飛び起きると、廊下に続いている扉に近づいた。
そしてーーーー
ーーーーードゴォォォン!!ーーーーー
ーーーー扉を右腕で思い切り殴りつけた。それにより扉は吹っ飛び、反対側の壁に激突する。
今の凰香は完全にキレていた。まだ防空棲姫化してはいないが、眼は赤く染まり、全身は赤いオーラを纏っている
「て、提督!」
加賀が凰香を引き止めようと右腕に抱きついてくるが、今の凰香にとっては鬱陶しいこと
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ