第四十七話 海はなけれどその七
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懐から金ののべ棒を一本出してだ、頭に笑って差し出してから言った。
「貸してもらうからにはな」
「お礼としてか」
「ああ、渡したいんだがな」
「好意としてなら受け取っておく、しかし多過ぎるわ」
「多いか」
「のべ棒まではいらん」
金のそれはというのだ。
「一人辺りの金のコインの数でよいわ」
「一人一枚か」
「それでいいわ、金は大事に使え」
「俺達はこれ位すぐに稼げるぜ」
それこそ巨人達と遭遇し戦え倒せばというのだ、実際に久志達にとって金の棒の一本なぞどうということはないものだ。
「だからな」
「いや、そこまではいい」
「コインでいいっていうんだな」
「金は大事に使うことじゃ」
笑っていても確かな声でだ、親父は久志に述べた。
「だからじゃ」
「のべ棒はいいか」
「うむ」
そうだというのだ。
「コインで充分じゃ」
「それで俺達はか」
「これからはな」
「そうしたことを覚えておけってか」
「金は何をするにも必要でな」
「その使い方はか」
「覚えておくのじゃ、世界を救うのじゃな」
それならとだ、頭は久志の目をその深いこれまでの人生から身に着けた知恵から話した。
「ならばじゃ」
「金の使い方もわかれってことか」
「政治をするんじゃろ」
「まあ勢力を旗揚げしたらな」
まだ先だと思いつつもだ、久志もそれは考えていた。それで頭に対してもそのことは事実だと答えた。
「戦とそっちがメインになるな」
「では余計にじゃ」
「戦も金がかかるからか」
「金が幾らあっても足りんわ」
戦も政治もというのだ。
「一つ一つ金がかかってしかもやることが多い」
「だからか」
「それでじゃ、金の使い方は今からな」
「覚えてろってことか」
「よくな、だからじゃ」
「今俺に話してくれたのか」
久志はこのことを理解して頭に応えた。
「そういうことだな」
「そうじゃ、バイキングは戦うだけではない」
「商いもするからか」
「そちらもする、商人達を護るだけでなくな」
自分達でもというのだ。
「わし等自身商いもする」
「そういうことでか」
「よく覚えておけ、ではじゃ」
「これからだな」
「コインを貰おう」
久志達のメンバーの数だけのそれをというのだ。
「七枚じゃな」
「それじゃあな」
「うむ、金の使い方を覚えておくことじゃ」
またこのことを言う頭だった、そうしてだった。
久志は頭に七枚のコインを渡してそのうえで船を出してもらい仲間達と共に乗り込んで湖に出た、湖に出て街や波止場が見えなくなってからだった。
久志は街のあった方を見て共に船の上にいる仲間達に言った。
「湖に出るとかな」
「思わなかったよね」
「ああ、本当にな」
源三にしみじみとした口調で言った
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