第六十七話 何進、陥れられるのことその四
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「わかったな」
「いえ、将軍ここは」
「誰か護衛につけられるべきでは?」
「そうです」
しかしだった。ここでだ。
兵士達は口々にだ。こう言うのであった。
「武官の方でどなたか御呼びして」
「剣や槍は使えずとも武芸に秀でた方をです」
「そうして護衛とされては」
「今ならまだ間に合います」
こう進言する。そしてその理由も話す。
「十常侍は危険です」
「宮廷こそは奴等の根城ですし」
「今も。どんな罠を仕掛けて来るかわかりません」
「ですから」
「いや、ここはそれではならん」
何進は司馬慰の言葉を思い出しながら述べた。
「ここはわらわ一人で入るのじゃ」
「宮廷に」
「あくまで、ですか」
「そしてそこから文武の百官を呼ぶ」
司馬慰に言われたことをそのまま話す。
「そうするのじゃ」
「そうされますか」
「あの、どうしてもですか」
「ここは」
「そうじゃ。そうする」
また言う何進だった。
「わかったのう。司馬慰の言った通りにするのじゃ」
「あの方のですか」
「そうされると」
「あの者は切れ者じゃ」
彼女に対する絶対の信頼も見せる。
「その言った通りにして間違えたことはない」
「左様ですか」
「司馬慰殿が仰るからこそ」
「そうされますか」
「そうする。大丈夫じゃ」
司馬慰への信頼のまま述べる。
「門で待っておれ。よいな」
「はい、わかりました」
「それならですね」
「今は」
「そういうことじゃ。ではな」
こう話してだ。彼等は宮廷に向かう。しかしだった。
ふとだ。兵士の一人が馬上で行った。
「そういえば司馬慰様の真名は」
「むっ、そういえば誰も知らないか?」
「そうだな。何と仰ったか」
「聞いたことがないぞ」
「そうだ、ない」
「何というのだ?」
兵士達の誰もがだ。それは知らなかった。
「それで御呼びすることは駄目だとしても」
「真名は知っていていいのにな」
「誰も知らないのか?」
「そうだな、誰も」
「知らないのか」
彼等の話にだ。何進もだった。
ふと気付いた顔になってだ。こう述べた。
「そういえばわらわもじゃ」
「将軍もですか」
「御存知ありませんか」
「そうでしたか」
「後で聞いておこう」
特に深く考えることなく述べた言葉だった。
「腹心の真名を知るのは当然じゃな」
「そうです。それでは」
「聞かれますね」
「そうする。思えば迂闊じゃった」
何進は眉を顰めさせて述べた。
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