第一話 悪夢の始まり
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ーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』
どこかで一つの悲鳴が上がった。
周囲のプレイヤー達は、信じられない、あるいは信じないというかのように、ぽかんと放心したり、薄い笑いを浮かべたままだった。
俺も、脳では受け入れようとはしていたが、不意に脚が震え始めた。
「信じねぇ……信じねぇぞオレは」
クラインは石畳に座り込み嗄れた声を放つ。
それでもなお、茅場明彦のチュートリアルは続く。
『それでは最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ』
言われるがままに右手の指を2本揃えて真下に引き、アイテム欄を開いた。
他のプレイヤーも同じように開いてゆく。
アイテム名は―――“手鏡”。
恐る恐る手に取り、確認する。
覗きこんだ鏡に映るのは、俺の勇者顔のアバターだけだ。
隣にいるクラインへ顔を向ける。
彼もキョトンと鏡を見つめたまま変化がない。
―――と。
急にクラインの体が白く光り始める。
すぐに光が収まりもう一度鏡に目を向ける。
そこには現実世界の、生身の容姿があった。
「お前がクラインか!?」
「おめぇがキリトか!?」
お互い顔を見合わせる。
俺は遠目で見ると女性に間違われそうな女顔に。
クラインは無精ひげを生やした山賊顔になっていた。
『諸君は今、なぜ、と思っているだろう。なぜSAO及びナーヴギアの開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか?これは大規模なテロなのか?身代金目的の誘拐事件なのか?と』
今一度茅場の声が空から降り注ぐ。
そこで初めて茅場の声に色合いが帯びる。
『私の目的は、そのどちらでもない。それどころか、今の私は、すでに一切の目的も、理由も持たない。なぜなら……この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。この世界を創り出し、観賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた』
無機質さを取り戻した茅場の声が響いた。
『……以上で〈ソードアート・オンライン〉正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤーの諸君の健闘を祈る』
最後の一言がこの空間にわずかな残響を引いた。
真紅の巨人は溶けるように消え、空は真っ赤な市松模様の風景から元の風景へと戻った。
だが、自らの命がかかっていると知った一万人のプレイヤー集団は途端にしかるべき反応を見せた。
「嘘だろ・・・なんだよこれ、嘘だろ!」
「ふざけるなよ!だせ!ここから出せよ!」
「こんなの困る!このあと約束があるのよ!」
「嫌ああ!帰して!帰してよおおお!」
始まりの町の広場で阿鼻叫喚の叫び
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