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Fate/ONLINE
第一話 悪夢の始まり
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じることはなかった。

「ぬおっ……とりゃっ……うひぇぇっ!」

最初のうちは奇妙な掛け声をあげて剣を無茶苦茶に振り回すクラインであったが、

「りゃあ!」

レクチャーを続けて行く内にモーションにも慣れ、青イノシシに刃を当てることに成功した。
ぷぎーという哀れな断末魔に続いて巨体がガラスのように砕け散り、俺の前に紫色のフォントで経験値が浮かび上がっていた。

「うおっしゃあああ!」

クラインは派手なガッツポーズを決めると、満面の笑みを浮かべ、左手を高く掲げた。
ハイタッチをすると俺は笑いながら賞賛を送った。

「初勝利おめでとう。……でも、今のイノシシ、他のゲームだとスライム相当だけどな」
「えっ、マジかよ!おりゃてっきり中ボスかなんかだと」
「なわけあるか」

笑いを苦笑に変えながら、俺は剣を背中の鞘に収めた。
しかし、クラインの感動と喜びはよく解る。

これまでの戦闘では、経験・知識ともにクライン二カ月分の上回る俺だけがモンスターを倒してしまったので、彼はようやく自分の剣で敵を粉砕する爽快感を味わう事ができたのだ。
クラインはおさらいのつもりか、同じソードスキルを何度も繰り出して楽しげに気勢を上げている。

俺はぐるりと周囲の草原を見渡した。

巨大浮遊城“アインクラッド”第一層のスタート地点、“はじまりの街”の西側に広がるフィールドに俺達はいる。
周囲には、少なからずプレイヤーが同じ様にモンスターと戦っているはずだが、空間の恐るべき広さゆえか視界内に他人の姿はない。

満足したのか、クラインが剣を鞘に戻しながら近づいてきて同じように視界を巡らせた。

「しっかしよ……こうして何度見回しても信じられねぇな。ここがゲームの中だなんてよう」
「中ってゆうけど、別に魂がゲーム世界に吸い込まれたわけじゃないぜ。俺達の脳が、目や耳の代わりに直接見たり聞いたりしてるだけだ」
「そりゃ、おめぇはもう慣れてるんだろうけどよぉ。おりゃこれが初のフルダイブ体験なんだぜ!すっげぇよなあ、まったく……マジ、この時代に生きててよかったぜ!!」
「大げさなやつだなあ」

笑いながらも、内心では俺もまったく同感だった。

クラインが頼み込んできた時は、思わず身じろぎしてしまったが、子供のようにはしゃぐ様子を見ていると、俺も他人事とは思えず同意してしまう。

ことによると、こいつとなら長く付き合えるかもと思いながら俺は口を開いた。

「さてと……どうする?感がつかめるまで、もう少し狩り続けるか?」
「ったりめぇよ!……と言いてぇとこだけど……そろそろ一度落ちてメシ食わねぇとなんだよな。ピザの配達、五時半に指定してっからよ」

クラインは食事を取ると言い俺たちは一度別れることとなった。

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