第一章
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ぬらりひょん
この時中川穂乃香はその話を聞いておっとりとした大人しそうな顔立ちを驚かせて父に問い返した。大きな垂れ目と細い眉、長めの黒髪にえんじ色のカチューシャがよく似合う。おっとりとした顔立ちだが胸はかなりの大きさだ。
「そのお話本当なの?」
「ああ、うちみたいな古い家にはな」
父も娘に話した。
「時たま来るらしいな」
「ぬらりひょんが」
「うちは商売やってるな」
呉服屋の大店だ、江戸時代からある老舗の店だ。
「夕方とか忙しい時にな」
「ぬらりひょんが来てなの」
「勝手にくつろいで帰っていくんだよ」
「そうなの」
「それで気付いたら勝手にお茶やお菓子が食われていて煙草も吸われてる」
「お父さんかって思ったら」
「俺だって店に出てるさ」
夕方にもというのだ、店の主として。
「親父や御前の兄さん達と一緒にな」
「そうよね」
「ああ、とにかくな」
「そんな妖怪がなの」
「うちみたいな古い家には来ることもあるらしいな」
「それで勝手にくつろいで帰るの」
「そうなんだよ」
こんな話を父から聞いてだ、穂乃香は次の日通っている神戸にある八条学園高等部一年F組の教室で同じ中学で今はクラスメイト同士の東条るかと須崎恭子に話した。るかは気の強そうな目をしていて唇は小さい。長い茶色の癖のある地毛を後ろでポニーテールにしている。胸は穂乃香よりさらに大きい。恭子は金髪で少しジト目の感じだが顔立ち自体はいい。金髪を長く伸ばしているがイギリス人の母から受け継いだものだ。胸は穂乃香より少しない位だが大きな方だ。三人共白のブラウスに紺のベストとブレザー、ミニスカートという制服だが恭子だけはネクタイでなくリボンを首に付けている。三人共中学の時はそれぞれ同じクラスになったことはなく部活も違っていたのでそれ程親しくなかったが高校で同じクラスになって親しくなった。
その穂乃香の話を聞いてだった、まずはるかが言った。
「妖怪ねえ」
「そう、ぬらりひょんっていってね」
「それうちの学校にも出る話ない?」
るかは腕を組んで眉を顰めさせて穂乃香に返した。
「うちの学校あちこちに妖怪や幽霊の話あるし」
「そういえばそうだったかしら」
「そのぬらりひょんもね」
「それで何かね」
「あんたのお家みたいになの」
「古いお家にも出るってね」
「そんなお話があるの」
「そうなの」
「本当かしら」
また言うるかだった。
「大阪の福島にも出るとか」
「福島ってそんな話あるの?」
今度は恭子が言ってきた。
「うちのお母さんスコットランド生まれでそんな話よく知ってるけれど」
「イギリスってそんな話多いわよね」
「物凄くね」
恭子はるかにすぐに返した。
「あちこちにね」
「それでス
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