もう二度と
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うとしていることを察知する。
「シェリア・ブレンディ。よく見てろ。貴様の判断がどれだけ愚かだったかを」
「やめて・・・」
音速を凌駕すると思われるほどのスピードでメルディに接近する天海。彼は拳を握り締め、彼女を貫こうとした。
「よせ・・・」
「やめろ・・・」
地面に伏せている者たちがメルディに迫る危機にそう呟くのがやっと。敵の接近に彼女は気が付いたが、とても逃げられるものじゃない。
「メルディ!!逃げろ!!」
ジェラールが必死に叫んだ。だがその声が届くよりも速く、天海の腕が彼女の体を―――
ズッ
貫こうとした。だが、彼の拳はメルディまで届かなかった。
「え・・・」
殺されると思ったメルディは何が起きているのかわからない。目の前まで来ていた敵の攻撃。それは、一人の男の体によって阻まれていた。
「がはっ・・・」
腹部を貫かれた赤髪の男は吐血した。不満げな表情を浮かべている天海がそこから腕を引き抜くと、支えを失ったカミューニは膝から崩れ、倒れ込んだ。
「お兄ちゃん!!」
兄のように慕ってきた人物に駆け寄り体を揺らす。仰向けにされた彼の目は、完全に生気を失っていた。
「ごめん・・・メルディ・・・」
「なんでお兄ちゃんが謝るの・・・」
自分を助けてくれた彼の謝罪の言葉に困惑するメルディ。カミューニはわずかに残された意識の中、必死に言葉を紡いだ。
「あの時俺が街に残ってれば・・・あんなことにはならなかった・・・そうすればお前はもっと幸せになれたかもしれないのに・・・」
ゼレフを目覚めさせる鍵を手に入れるために二人の故郷を襲撃してきた悪魔の心臓。彼らを追い払うだけの力がカミューニにはあった。しかしその日は運悪く彼は街から出ており、帰ってきた頃には街は焼け、人は死に、彼女は連れ去られた。
善悪の区別がつかない幼少気を闇ギルドで過ごしたことにより、彼女は犯罪者として逃げ回るしかなくなった。今でこそこうして笑顔を見せれる女性となったが、もし悪魔の心臓の襲撃を防げていればと彼は常々考えており、こんな言葉が出てきたのだ。
「違うよ・・・お兄ちゃん・・・」
表情が一切動かなくなった彼を抱き締める。徐々に白くなっていく彼の顔を覗き込み、メルディは涙ながらに訴えた。
「お母さんたちが死んじゃったのは辛かった・・・でも、私にはウルもお兄ちゃんもいてくれた。ジュビアとも仲良くなれた。だから、私は全然寂しくなんかないよ・・・だから・・・死なないでよ・・・」
みんながいてくれたからメルディは今が一番楽しいと思えた。そんな日々をまた取り戻すためには彼は必要不可欠な存在。
「ごめん・・・メルディ・・・」
涙で
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