第三章
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まりかは彼氏を兄の部屋に案内、した。まりかが木の扉をノックすると入れと往年の広島を舞台にしたヤクザ映画のシリーズの主役の俳優の様な声で返事が返ってきた。
「入れ」
「ええ」
まりかが応えた、そしてだった。
二人は一緒にだった、その扉を開けて。
部屋に入った、するとだった。
部屋の真ん中に背筋がぴんと張った若い男が座っていた、清潔そうなシャツとスラックスと靴下という外見だ。
背は高く髪の毛は短く刈っていて面長の顔である、目は鋭く口元は引き締まっている。その声に相応しい顔だった。
その彼がだ、まりかと彼氏に言ってきた。
「座れ」
「ええ」
まりかが応えてだ、そのうえで。
二人で男の前に座った、男は正座している二人に自分も正座をしていて言った。
「出戸まりかの兄出戸文太だ」
「はい」
「君はまりかの何だ」
彼氏を見据えて聞いてきた。
「それで」
「はい、僕は」
まずは名乗ってだ、それからだった。必死に勇気を振り絞って、まさに一生分の勇気を振り絞る気持ちで彼に言った。
「妹さんと交際させてもらっています」
「まりかとか」
「そうです」
自分を見据える彼に答えた。
「そうさせてもらっています」
「そうか」
兄はこう返した、しかし。
彼氏は彼が何をしてくるのかと身構えた、だが。
ここでだ、彼は言ったのだった。
「わかった、宜しく頼む」
「えっ!?」
「妹を宜しく頼む」
彼氏だけでなくまりかも驚いていたがそれでもこう返したのだった。
「これからな」
「出戸さんをですか」
「そうだ、宜しくな」
こう言うのだった、それで話は終わった。
これには彼氏もまりかも唖然となった、それでまりかは唖然となったまま彼氏を駅まで送ったがここで言った。
「あの、何ていうかね」
「凄く怖い人ですよね」
「ええ、私に男の子が近寄ったらね」
「プロレス技仕掛けて」
「ヤクザ屋さんも一睨みよ」
「そんな凄く怖い人ですよね」
「家族で一番怖くて怒ったら鬼なのに」
それでもというのだ。
「それなのに」
「あっさりとでしたね」
「宜しく頼むだったから」
「あの、本当に」
「私も驚いてるわ」
実際にまりかはそうした顔であった。
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