第一章
[2]次話
近代日本経済学
野田陽子は大学で経済学を専攻している、しかし彼女は今研究室で教授に本に囲まれつつ苦い顔を見せていた。
「私が前から思っていることですが」
「日本の経済学はだね」
「まだまだマルクスが残っていますね」
ソ連崩壊で否定された筈のこの理論がというのだ。
「そうですよね」
「うちの大学は違うけれどね」
教授はこう陽子に返した。
「幸いにしてね」
「はい、ですが日本全体ではまだ」
「そりゃそうだよ、新聞記者が天下りするだろ」
「はい、経済学の教授にも」
「彼等は経済学っていってもね」
「マルクスで止まってるからですね」
「そうだよ、だからね」
そうした人間が経済学の教授になるからだというのだ。
「まだ日本の経済学にはマルクスが残ってるんだよ」
「そういうことですね」
「もう世界的には否定されているんだけれどね」
「あの、そもそもです」
陽子は眉を曇らせて教授に言った。
「マスコミは官僚の天下りを批判しますね」
「いつもね」
「それでも自分達はですか」
「自分達はいいんだよ」
教授は陽子にあっさりと返した。
「天下りをしてもね」
「そうなるんですね」
「慰安婦で嘘を書いた新聞記者もじゃないか」
「あの人もそうでしたね」
「日本の大学の教授に天下りしそうだったじゃないか」
「それが批判されてなくなりましたね」
「けれど内定していたんだ」
天下り自体はというのだ。
「実際にね」
「そのこと自体はですね」
「決まっていたんだよ、それでね」
「そうした人が大学にいて」
「今もだよ」
「日本の経済学にはマルクス主義が残っていますか」
「そうだよ、まあこんな国は日本だけだろうね」
今だに経済学でマルクス主義を堂々と肯定している学者がいる国はというのだ。
「他は北朝鮮かも知れないけれど」
「もう中国やベトナムでもですね」
「両方共もうね」
掲げている看板だけは共産主義でもというのだ。
「誰がどう見ても違うからね」
「そうですね」
「うん、だからね」
「もう日本以外はですね」
「北朝鮮だけだろうけれどまあ北朝鮮は」
教授はこの国のことも話した。
「どう見ても共産主義でも共和国でも民主主義でもないからね」
「世襲制の封建主義みたいな独裁国家ですね」
「マルクスよりもあの将軍様の一族だから」
彼等を何よりも神格化している国だからだというのだ。
「また別だよ」
「そうですよね」
「あの国はまあそうした国ということで」
「置いておいてですね」
「うん、とりあえず日本にお話を戻すと」
「日本だけですよね」
「そう思うよ、今だにマルクス主義経済を肯定的に教えている国はね」
まさにというのだ。
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