第一章
[2]次話
美術館の絵
平野恵の趣味の一つに美術館巡りがある、休日等に美術館に行ってそうして絵や彫像を観ていくのだが。
ある日だ、恵は友人の一人に言われた展覧会には眉を曇らせてこう答えた。
「ちょっとその人は」
「嫌なの」
「ええ、ゴヤはね」
スペインの有名が画家だ、巨人等の作品が知られている。
「好きじゃないの」
「そうなの」
「ええ、だから今回は行かないわ」
「そうするのね」
「また別の人の展覧会に行くわ」
「そういえば今度はね」
友人はここで梅田のある画廊での博覧会のことを話した、その画家の名前を聞くとだった。恵は今度は笑顔になって言った。
「その人はね」
「行くのね」
「ええ、絶対にね」
こう言うのだった。
「そうするわ」
「そうなの、けれどね」
話をした友人は笑顔になった恵に怪訝な顔で言った。
「この人今回が二回目の」
「展覧会は」
「そう、まだまだ無名の人じゃない」
「ゴヤと比べたらかなりね」
「それでもゴヤは行かないのね」
「絶対に行かないわ」
恵はゴヤについては目を顰めさせて言い切った。
「何があってっもね」
「そうするの」
「そう、それでね」
「その人のところには行くのね」
「絶対にね」
「名声とかじゃないのね」
その画家のとだ、友人は恵に言った。
「恵が画家の人を見るのは」
「ええ、そうなの」
実際にとだ、恵も答えた。
「私が画家の人を見るのは」
「絵を見るのね」
「そうなの」
まさにそれをというのだ。
「もっと言えば自分が好きな絵ならね」
「そうした絵を描くのなら」
「その人をの絵を観に行くわ」
そうだというのだ。
「私はね」
「成程ね」
「そうしてるから」
「ゴヤはどういったのが嫌いなの?」
友人は恵の彼女自身の言葉から彼女がゴヤを好きではない、もっと言えば嫌いと見てそれでこう尋ねた。
「一体」
「だって怖いじゃない」
「怖いからなの」
「ゴヤって気持ち悪いでしょ」
その絵がというのだ。
「人間の内面描いてるって言われてるみたいだけれど」
「その内面の怖さをよく描いていて」
「それがね」
「怖いから」
「そう、好きじゃないの」
「そうなのね」
「不気味な絵とかはね」
ゴヤだけでなく、というのだ。
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