ターン88 真紅の暴君と紅蓮の災厄
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ークネスの完全な手駒に成り果てた」
「そ、そんなの」
「横暴だと思うかい?ひどすぎると思うかい?でも、ある意味ではこの話はとても残酷に筋が通っている。君は彼女の口調について、本人から説明を受けたことはあったかい?」
事故のショックで口がきけなくなった彼女に、ある時謎の声が聞こえた。声の主が彼女の言葉を代弁して会話を可能とする代わりに、いつか彼女は声の主に何かをしなければならない。あの時からきな臭い話だとは思っていたけど、よく考えればうちの神様だって第一声が『力が欲しいか?』だったからどこもそんなものだろうと思って記憶の片隅に放りこんでいた記憶だ。
『契約か』
その張本人が今更、厳かな口調で問いかける。遊がコクリ、と頷いた。
「そう。純粋な交換条件、忌々しいことに単体では非の打ちどころのないダークネスとの完全な契約さ。さっきも言った通り、彼女は責任感が強かったからね。もはや元の人格すらなくなった今でもその名残が影響しているのか、馬鹿正直にそれを遵守しているのさ。だがこの話、おかしいとは思わないかい?元々彼女を蘇らせたのはダークネス自身、それが自分のつくりだした欠点を埋め合わせるために契約を迫る?馬鹿馬鹿しい、これはただのマッチポンプさ。つくられて日の浅い、まだ幼い彼女の精神にダークネスに対する借りを背負わせるためにわざわざ仕組まれた、ね」
話を聞くうちに握りしめた拳が、白くなるほどに力を込めていた。ダークネス。僕、夢想、稲石さん、その両親、僕の母親、そして夢想や稲石さんのオリジナルといえる『彼女』……一体、どこまで僕らの人生を引っ掻き回せば気が済むんだ。そのうえ、この世界までよこせだと?ふざけるな、お前には砂粒ひとつくれてやるもんか。
「燃えてるねー。まあ頑張ってよ、もう僕には関係ない話……だし、ね……」
そこでついに、遊が力尽きた。空を見上げるその目から、みるみる光が消えていく。その体が風と共に、塵となって流れていく。
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