暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン88 真紅の暴君と紅蓮の災厄
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だよ」
「夢想が……あの時の生き残り……?」

 物心つく前に僕が母親を失ったあの事故については、これまで努めて考え無いようにしてきた。当時の新聞記事は何度も読んでいたからもう1人相手方にも生き残った人がいるとは知っていたけれど、それが誰なのかはこれまでも意図的に探さないようにしてきた。
 なぜか。探し出して、その人に会ったとして、それでどうしたいのかがわからなかったからだ。その相手を目の前にした時、自分が何をするのかが予想できなかった。激情に駆られて殴りかかるかもしれないし、ひどいことを言うかもしれない。僕には親父がまだいたけれど、その子は両親がいなくなった。それが頭ではわかっていても、実際にその人を相手にするとその時どうするのか、僕自身でさえわからない。それが怖かったのだろう。
 そういえば、といまさらながらに、修学旅行の時夢想と行った隣町の墓地を思い出す。あの時夢想は両親の墓を前にして、なんと言っていた?交通事故、物心ついてすぐ。あんな昔から、ヒントは目の前に転がっていたんだ。それに僕は気づかなかったのか、それとも無意識に目を逸らしていたのか。今となってはもう、僕にだってわからない。

「彼女は責任感が強かったからね。あの時女の子の一家と君の母親は全員即死だったけれど、実は男の子、遊野清明だけは時間の問題とはいえまだ息があった。それを見て彼女は、この事故は私のせいで起きたんだと自分を責めに責めたあげく、その命を投げ打って唯一まだ命が残っていた君に自分の生命のすべてを譲り渡したのさ」

 あまりの話に頭が真っ白になり、何も言うことができなかった。僕も本来は、あの事故で死んでいた?それを夢想の前身である『彼女』が命を投げ打って助けてくれた……あまりにも信じられない話だが、不思議と疑う気にはなれなかった。それどころか僕の中のどこかで、ずっと足りなかったパズルのピースがかちりとはまった時のような納得さえ感じる。

『待て。その女の子が即死したのなら、マスターの知る彼女はなんなのだ?ダークシグナーではないはずだ、それに第一他の地縛神はまだナスカで眠りについている』

 チャクチャルさんが今の話の矛盾点に気づき、鋭く問いただす。確かにそうだ。夢想が即死したというのなら、僕らの知る夢想は?だがその答えも、遊は既に掴んでいた。

「簡単だよ。彼女は確かにその命こそ消えたけれど、まだその場に強い後悔や悲しみ、自分自身への怒りや贖罪の思いといった負の感情の残滓が残っていた。それをダークネスが拾い集めて死んだはずのその女の子に注入して、いつでも手駒として使えるように蘇らせたのさ。記憶を消され、自分が何であるかもわからずにただ死に際の負の念だけを利用され。今君が見ている彼女は、誰も望んでいなかったはずの哀れな存在だよ。その挙げ句、今まさに彼女はダ
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