暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン88 真紅の暴君と紅蓮の災厄
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 図星だった。この男は、夢想についてまだ何か僕の知らない情報を持っている。例え聞いたことを後悔することになったとしても、それでも無関係ではいられない話を。押し黙った僕を見てゆるゆると息を吐き、やや苦しそうにくすくすと笑う。

「正直なのはいいことだよー。さて、彼女だけど。彼女は元々、僕たちの仲間だったんだよね。僕も、それからそこの冨野クンもいる、ある組織のね」
「……初耳だな。それにしても、随分べらべら喋るじゃねえか」
「アビスやべリアルならまだしも、カラミティまで引っ張り出して負けたんだ。もうこれ以上の奥の手はないしー、闇のゲームを仕掛けた以上どうせこの先長くはないしー。だったら、最後くらい大人しく観念するさ」

 先ほどの激しい衝突の結果生まれたクレーターや、薙ぎ倒された木々を見る。あの時は自然すぎて何も思わなかったけれど、現実に影響が出ているということは確かに闇のゲームだったのだろう。

「ここから先は富野クン、君も知らない話さ。『彼女』は元々古株でね、つい最近討ち死にしちゃったけど、青眼使いのおっさんがいただろう?あの人の同期だったのさー。だからあの人もちょくちょくこの世界まで来てたみたいだけど、まあそれは関係ないね」

 彼女、というのは夢想……いや、稲石さんの話と併せて考えるなら、その大元になったオリジナルの人格のことだろう。先が長くないというのは本当のようで、こうして話している間にみるみる衰弱していくのが手に取るようにわかる。だから、何も口を挟めなかった。

「18年ぐらい前だったかな?ある時、彼女はこの世界に来た。新しい転せ……獲物が来る兆候が見つかったからね。だけど、彼女はそこで1つヘマをした。どうやらこの世界のバランスが、何かの拍子で崩れちゃったんだろう。偶然彼女の存在に気づいたダークネスは、その外敵を排除するため?それとも、単に世界の混乱を起こすため?今となってはわからないけれど、とにかく彼女にちょっかいをかけた。間の悪いことに、そのせいで大事故が起きたのさ。18年前の童実野町、自動車同士の正面衝突事故。両者の車にはそれぞれ母子2人と家族3人が乗っていて、片方は赤ん坊の男の子を置いて母親が。もう片方はこれまた赤ん坊の女の子を残してその両親が。全く突然に3人もの犠牲者が生まれたものの、奇跡的に赤ん坊2人だけが助かった事故……」

 みるみるうちに顔が青ざめていくのが、鏡で見なくてもわかった。その事故は、僕も知っている。いや、知っているなんてものじゃない。相手が目の前で急速に弱っているということも忘れ、思わず震え声が出る。

「まさか、その事故って」
「その通り。その不幸な事故を起こした両者の名字は、新聞には載らなかったとはいえ少し調べればすぐにわかる。男の子の方が遊野。女の子の方は河風。君達のこと
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