暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン88 真紅の暴君と紅蓮の災厄
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いいから、早く三沢君のところに戻ってあげなさい。幸運を、祈るニャ』
「はい……ありがとうございます」

 しっかりと小袋を抱え、すぐに背を向けて走り出そうとしたところでふと気になって、1度だけ振り返った。

「大徳寺先生、1つだけいいですか?もし……もしも迷った時は、僕は何を信じればいいんでしょうか」

 言ってからなんだそれ、と、自分の言葉の稚拙さに笑いそうになる。夢想がダークネスの駒だなんて話、いくら稲石さんの言葉でもそうおいそれと言いふらすわけにはいかない。あの人から直接聞いた僕だって、いまだ彼女を信じたい気持ちと稲石さんの言葉の間で揺れ動いている状態なのだ。出来る限りぼかしたつもりが、今度は抽象的になりすぎてしまった。もう少し言葉を継ぎ足そうとしたが、それより早く大徳寺先生の返事が返ってきた。

『清明君。君が何の脈絡もなくそんな質問をするとは思えないから、何か人には言えないわけがあるんだろうニャ。ならその理由は聞かないけれど元寮長として、そして元先生として生徒の悩みに答えると、君は少し自分の中で全てを抱え込もうとしすぎていると思うのニャ』

 生前と同じように穏やかな声で、大徳寺先生が喋る。その言葉を、僕はただじっと聞いていた。

『君には確かに、他の人にはない特別な力がある。だけど、それは君という存在のほんの一部の特徴でしかないのニャ。例えその力がなかったとしても、君という存在にはただそこにいるだけで周りを巻き込む不思議な魅力がある。だから、我慢や必要以上の気遣いなんてする必要はどこにもないのニャ。君は、君のやりたいことをやりたいようにやる。それが一番うまくいくし、もし君の目が曇って間違った道を選ぶようなことがあれば、その時は君に惹かれて集まってきた仲間たちがきっとその目を覚まさせてくれるのニャ』

 同じだ、とぼんやり思った。ヘルカイザーも、覇王の異世界で別れるときに僕のことをそうやって称していた。常に自由でいるのが一番お前の性に合っている、とも。どうしてあの言葉を、今まで忘れていたんだろう。

『最初から最後まで常に完璧な答えを出すことなんて、神様だってできっこないのニャ。難しく考えすぎないで、いざとなったら助けてもらう。そのぐらいの気持ちで、自分の直感を信じればいい。少なくとも、私はそう思うよ……少しは気が楽になったかニャ?』
「……ええ。ありがとうございました、大徳寺先生」
『その分だと少しは気が楽になってくれたみたいで、私としても教師冥利に尽きるのニャ』

 実際、大徳寺先生に相談してよかった、そう思った。さっきまであれだけ先の見えなかった未来が、押しつぶしてきそうな不安が、だいぶマシなものになった気がする。自分の直感を信じればいい、か。

「ま、チャクチャルさんも何かあったら頼むよ。いいで
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