暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜白猫と黒蝶の即興曲〜
交わらない点:Point before#1
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をすすりながら、鋭二はふと静かだな、と思った。
いつもならばこの辺りで声をかけてくるはずなのに、と姿なき第二の人物を探そうと明後日の方向をきょろきょろする鋭二。
だが、部屋の中には誰もいない。
電子で制御された不健康でクリーンな音以外は、何も。
「……ユナ?」
小さな声。それが迷子になった子供のようで、自分で言っていて自嘲気味に笑ってしまった。
だが、現れない。
囁きのようなその声も、カーテンの向こうの日差しの中に虚しく溶け消えていく。
―――何で。
具体的な思考や理屈が先にあったのではない。
ただ、ぞわぞわと。指の合間を虫が這いまわるような得体の知れない感覚が、ビニールを炙るかのように心に混乱よりも意味のない焦りを生じさせた。
急いで宙空に浮くホロウインドウを繰り、スケジューラを起動する。
といっても、記してあることの大半は鋭二の予定ではない。ほとんど隙間なくびっしりと埋められたその内容のほとんどは《彼女》の活動に関してのことだ。十月に催された発表セレモニー以来、主に宣伝のために激増した各種メディア媒体への出演は途切れることを知らない。
だが。
「……ない。今日のプログラムは何もない」
もともと今日は、人員も少ないので完全な空きの日だったはずだ。オーグマーの発売へ向けて加速する、方々へのPRなどで軽微なエラーが蓄積しているかもしれない《彼女》の調整日。
空欄の日付を指先でなぞりながら、どういうことだ、と唇の合間から声が漏れ出る。その言葉が掠れていたのは、決して寝起きだからではないだろう。
天板の上に投げ出されていた携帯端末を手に取り、見知った人物に電話をかける。
ワンコールで繋がった。
『何だね?』
「教授、ユナがいなくなったんです。そちらに行っていませんか?」
厳格そうな声。
その声色はニュートラルであるにもかかわらず、反射的に罪悪感が込み上げてくるのを抑え、鋭二は幼馴染の父親である重村に言葉を重ねる。
「今日は調整のために、研究室にずっといるはずなんです。スケジューラに従うようプログラミングされているはずなのに……」
『論理回路のエラーか?ともかく、完全に行方不明という訳でもないだろう。サーバーを確認し、現在位置をスキャンして回収してくれ。なんなら再起動しても構わん』
「――――ッ!教授、それは!」
冷淡な、いっそ冷酷といってもいい重村の声に、鋭二は思わず鋭く息を吸い込む。
《彼女》に対する彼の
体勢
(
スタンス
)
は知っていたが、いくらなんでも今までの活動の中で細かく蓄積された一時データがまとめて消える再起動を、こうまで平静に言うとは信じられなかった。
《計画》に関わる本命のデータにはきちん
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