82部分:第七話 二人きりでその十二
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第七話 二人きりでその十二
ふとだ。ほう、と溜息に似ているがより中身のあるだ。そうした息を出したのである。
そのうえでだ。彼女はこんなことを言った。
「その方を讃えて。ここまで清らかな歌が」
「御気に召されたのですね、この曲も」
「はい」
「そうですか。私もこの曲は」
「お好きですね」
「これ程清らかな曲は他にはないでしょう」
そこまでの曲だというのだ。
「ですから」
「これがシューベルトなのですね」
「そうです。シューベルトの曲はどれも清らかなものです」
「モーツァルトとはまた違った奇麗さがありますね」
「音楽も様々ですね」
義正は笑顔で話す。
「こうした曲もありそれに巡り会える」
「幸せなことですね」
「そう思います」
こうした話をしてだ。そうしてであった。
二人は暫く曲を聴いてからだ。その店を後にした。
そしてだ。暫く二人で歩いてからだ。
駅前でだ。別れるのであった。
「ではここで」
「はい、また」
義正も真理もお互いを見て話す。
「機会を見つけて」
「御会いしましょう」
「申し訳ありませんが」
しかしだ。ここでだ。
義正は顔を曇らせてだ。真理にこんなことを告げた。
「お家までエスコートすることはできませんので」
「そうですね。私達の家は」
真理もだ。顔を曇らせて義正の言葉に応える。
「それだけは」
「どうしてもできません」
「はい。ですが」
それでもだとだ。真理は気を取り直した顔になって述べた。
「何時かはです」
「ええ、必ず」
「御互いの家を訪問し会えるようになりたいですね」
「そう思います。難しいですが」
「ロミオとジュリエットにはなりたくありません」
真理の今の声は強いものだった。
「決して。そうはなりたくありません」
「私もです」
義正もだ。真理のその強い声に強く頷き返した。
「心からそう思います」
「ですから。何時かお父様達にお話したいと思います」
「そうですね。反発があるでしょうが」
「それでも。負けないで」
「御互いに訪問できるようになりましょう」
「それに」
それで終わらないとだ。真理は言葉を続けた。
「私はそれで終わりたくはありません」
「訪問ではですね」
「はい、さらにです」
義正の顔を見上げてだ。そのうえでの言葉だった。
「八条さんと共にいたいです」
「私もです」
「貴方もですか」
「止まらなくなりました」
真摯な顔であった。その顔での言葉だった。
「私も。白杜さんがです」
「私をなのですね」
「愛してしまいましたから」
それならばだ。最早止まらないというのである。
「ですから」
「そうですね。それではです」
「勝ち取ります」
義正も言った。
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