巻ノ百二十九 木村初陣その八
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「実にな、若し歳を経られると」
「その時はですな」
「さらによく将になられる」
「そうだというのですか」
「そうじゃ、しかしこの戦で勝つのはな」
景勝はその厳めしい顔で話した。
「幕府じゃ」
「大坂は敗れる」
「そうだというのですな」
「そうじゃ、大坂方しかおらぬのにな」
それでもというのだ。
「篭城なぞする様では」
「とてもですな」
「勝てるものではない」
「だからですな」
「大坂は敗れる、茶々殿が実際の総大将では」
戦のことを何も知らぬからだ、景勝もこう思っているしこの考えは見事なまでにその通りのことだった。
「勝てる筈がない」
「篭城もあの方が言われた様ですな」
「どうやら」
「それではですな」
「大坂は自然と敗れる道を選んだ」
「そうなのですな」
「孤城は囲まれれば終わりじゃ」
その時点でというのだ。
「どういった堅城でもな」
「大坂城といえど」
「それでもですな」
「その城だけで囲まれると」
「それで、ですな」
「落城しますな」
「やがてはな、だから大坂は負ける」
そうなるというのだ。
「必ずな」
「木村殿の将がおられても」
「その才を活かしきれず」
「そうしてですな」
「敗れますな」
「敗れる、そう思うと惜しい」
自ら槍を振るい果敢に采配を執る木村を見ての言葉だ。
「あれだけの将がこの戦で若くして散ると思うとな」
「全くですな」
「左様ですな」
「あれだけの御仁が若くして散ると思うと」
「とても」
「しかしそれも戦、我等は武士として戦うと」
その木村とだ、こう言ってだった。
景勝は采配を執った、彼は自身が率いる兵達に果敢に攻めさせた。木村も果敢な采配を続ける。だがやがてだった。
景勝の年季を経た采配の前に木村は次第に劣勢になってきていた、だが。
ここでだ、何とだ。
木村の横にいた兵がその手に持っていた鉄砲を取られた、そしてその鉄砲が敵に向かって放たれた。
鉄砲を馬上から放ったその男を見てだ、木村は思わず声をあげた。
「後藤殿!」
「今福の敵は拙者が退けた!」
「それで援軍に来て下さったのですか」
「そうじゃ、木村殿よいか」
兵にその鉄砲を戻しつつ話した。
「戦とは今の様にするのじゃ」
「今の様にですか」
「迷わずに撃ちそしてな」
「攻める」
「こうした時はな」
まさにというのだ。
「今の様にするのじゃ」
「そうしたものですか」
「左様、では今からじゃ」
「はい、上杉家の軍勢をですな」
「押し返す」
こう木村に言った。
「そうしようぞ」
「わかり申した、それでは」
「共に攻めようぞ」
後藤は大槍を手に木村に行って自ら上杉の軍勢に突き進んだ。そうしつつ自身が率いる兵達に強い声
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