巻ノ百二十九 木村初陣その七
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「だからじゃ」
「ここはじゃな」
「任せよ」
「わかった、ではな」
「何、お主が戻るまではじゃ」
霧隠も霧を出しその中で剣を振るい手裏剣を投げている、そうして戦いつつの言葉だった。
「九人でやっておくわ」
「だからお主は早く行け」
由利は今も鎖鎌を振るっている、風の術も放っている。
「よいな」
「わかった、すぐに戻る」
こう十勇士達に告げてだ、そしてだった。
望月はすぐに姿を消してだ、そのうえで。
今福に来てだ、後藤に告げた。
「鴫野が危ういです」
「そうなのか」
「はい、ですから」
「わかった、ここは暫しわしが敵を押し返してじゃ」
「ではそれがしが」
木村は後藤に即座に申し出た。
「鴫野に向かいます、あそこのことはよく知っていますし」
「そうか、ならばな」
「すぐに向かいます、それでは望月殿」
木村は馬上から望月に言った。
「この度は」
「すぐにですな」
「向かいまする」
その鴫野にというのだ。
「そうしますので」
「さすれば」
「貴殿はすぐにそちらに戻られよ」
「わかり申した」
こうしてだった、望月はまた姿を消した。そして残った木村はすぐに自身が率いる兵達に強い声で告げた。
「皆の者、鴫野じゃ!」
「はい、鴫野にですな」
「これよりすぐに向かい」
「そしてですな」
「そこにいる敵を破るぞ」
そうするというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「これより」
「行くぞ」
こう言ってだ、そうしてだった。
木村はすぐに兵を率いて鴫野に向かった、そしてそこで押されている友軍のところに駆け付けて叫んだ。
「皆の者無事か!」
「はい、何とか!」
「ここにおります!」
「そうか、よく生き残った」
こう言うのだった。
「よいな、ではな」
「これよりですな」
「上杉家の軍勢を押し戻す」
「そうしますか」
「そうするぞ、このまま攻めさせてはならん」
上杉の軍勢にというのだ。
「ではな」
「はい、このままですな」
「さらに攻めて」
「そうして」
「そうじゃ、さらに攻めていくぞ」
木村は己の言葉通り自ら槍を持って敵の軍勢に突っ込みそうして戦う。景勝もその木村を見て周りの者達に言った。
「あれは豊臣家の将木村長門守殿じゃな」
「はい、左様です」
「あの方こそ木村殿です」
「豊臣家で最も若き将だとか」
「確かに若い、しかしな」
それでもと言う景勝だった。
「その采配、そして武勇はな」
「見事なものですな」
「実に」
「そのどちらも」
「よき将じゃ」
こう言うのだった。
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