第69話『霧の中の光』
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本当にどうかしている。勝てるはずもないのに、どうして自分はこの場を引き受けたのか。勝算の無い勝負など時間の無駄だと、以前の自分ならそう切り捨てていたはずだ。
でも、引き受けた。それはなぜか。
──たぶん、友達の為なのだろう。
*
目の前に立つのは、奇妙な仮面を付け漆黒のマントを羽織る、"ザ・不気味"。ちなみに通り名は"霧使いのミスト"と云うらしい。
音が伴ってはいないが、彼の足元からガスの様に吹き出る霧を見て、伸太郎は焦燥感に駆られて前へと踏み出した。
「先手必勝だ、喰らえっ!」ピカーッ
自身の得意技である目くらまし。というのも、真っ向から戦って勝てる相手などほとんど居ないので、不意を突く戦いしかできない故の戦法だ。
後は炎を使って、早々に方をつければ・・・
「…がっ!?」
腹部に衝撃が走る。まるで蹴られたかのように・・・否、蹴られた。ミストは目くらましをされたにも拘らず、伸太郎に一撃をお見舞いしたのだ。
確かに、伸太郎自身も目くらましを使った瞬間は相手を視認できない。だが自身に目くらましは効かないので、すぐに行動に移せていた訳だが・・・今のを見る限り、ミストに目くらましは通用しないようだ。現に、伸太郎の目が効かない一瞬の間に、ミストは動けたのである。
「こりゃ…手強いな…」
少し地面を転がった後、腹を押さえながら伸太郎は立った。
別に、目くらましを開幕だけに使うと決めている訳ではない。対処されようが、隙あらば使うつもりだった。しかしそれが封じられたとなると、いよいよ真っ向勝負になってしまう。それだと勝率は絶望的に低い。
「いよいよ霧も深くなってきたか…」
先手を打てず、霧の展開を許してしまう。つまり、ここら一帯がミストの領土と化した。ミストの姿はだんだん見えなくなり、ついに伸太郎は霧の世界に包まれる。
「何も見えねぇ…」
辺りは真っ白だが、まるで真っ暗な洞窟に居る気分。一歩踏み出せば、そこに崖でもあるかのような恐怖。霧は視界だけでなく、ジリジリと伸太郎の精神をも削っていく。
「早くも手詰まりってか。考えろ・・・がっ!?」
突然背後から衝撃が襲い、伸太郎はなす術なく地面に打ち伏せられる。すぐさま振り向いたが、そこに姿も気配もなかった。
「一体何が・・・うっ!」
起き上がろうとした瞬間に、今度は横腹に痛みが走った。伸太郎は真横に吹き飛び、地面を無様に転がる。
「く…なるほど、これがコイツの戦法か」
予想はついていたが、彼の戦法は『奇襲』だ。霧によって相手を惑わし、四方八方から攻撃を加える。まるで"暗殺者"だ。とはいえ、彼は武
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