第69話『霧の中の光』
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焦がれて肌が痛む。
だがそれはミストだって同じこと。一応ここまでは想定通りである。
「後は奴がどう動くか…」
炎の勢いは増す一方で、ついに霧が晴れ始める。徐々に火の海の様子が視認できるようになり、さらにミストの姿を捉えることもできた。これでようやく正面から戦える──
「……え?」
突然、伸太郎は素っ頓狂な声を上げる。この状況下において実に不自然な反応だが、そうせざるを得ない光景が目の前にあった。
「……」アタフタ
伸太郎の目に映ったのは、挙動不審と言わんばかりに辺りを見回し、あたふたとしているミストの姿だった。あの仮面でその動きは、とてもシュールで滑稽である。
「俺を探しているのか…?」
今のミストの様子を見る限り、そうとしか思えない。
しかし、それだとおかしな話だ。何せ、伸太郎からはミストが丸見えなのだから。すなわち、ミストだってこちらが見えているはずなのだ。それなのに、こちらを視認できていないということは・・・
「見えてないのか…?」
この結論は、伸太郎が立てた後者の仮定と一致する。つまり、ミストは本当に目を使わず、それ以外の手段で周りを視ていたのだ。
「…なら、今がチャンスだ!」ダッ
伸太郎はすぐさま、無防備のミストに向かって駆け出した。攻撃技は特にないので、とりあえず殴ることにする。晴登がよくやるように右手に炎を纏い、思い切り勢いを付けて──
「おらぁっ!」バキッ
仮面などお構い無しにミストの顔面を殴打。炎の拳が相手の右頬に鋭く刺さる。すると彼は大きく後退し、殴られた衝撃でついに仮面を落とした。
「痛って…人殴るのって結構痛いな。しかも思い切り殴ったのに倒れねぇとか、俺の力弱すぎて涙出そうだわ。でも、お陰でようやくその面拝めたぜ」
薄く汚れた白い髪を目にかかるほど伸ばし、気だるそうな表情が特徴の青年。それがミストの仮面の下の素顔だった。予想通りと言うべきか、彼は盲目なのだろう、目を瞑っている。
「霧の中で俺の姿を見てたんじゃない。足音や匂い、果ては呼吸音でも聴き取って、俺の位置を把握してたんだろ。だから木を燃やせば、音や匂いで妨害できて、その感覚諸々は使い物にはならないんだ」
「……」
仮面が取れた今だから、ミストの表情がはっきりとわかる。変化は小さいが、今の顔は悔しがっている顔だ。
してやったと言わんばかりのドヤ顔の伸太郎。しかし、木を燃やしたのはあくまで気休め。実のところ、ここまで効果があったのは予想外である。
「もうお前の霧は通用しねぇ。さぁどう出るよ?」
自分が優位に立ち、柄にもなく饒舌な伸太郎。ミストには多少武術で劣るが
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