第69話『霧の中の光』
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器は使っておらず、素手で戦闘している。そこに意味があるのかどうかはわからないが、即死しないだけ良しとしたい。
「それにしても、何で霧の中で俺が見えるんだ…?」
それが彼の魔術だから、と切り捨てられるなら簡単な話。霧の中で思うように動けなければ、そもそも"霧使い"という異名は付かない。しかし、それでは伸太郎の目くらましを防げた理由にはならないのである。
「となると、可能性は二つ…」
伸太郎は二つの仮説を立てる。『仮面が光を防いだ』と『目を使っていない』というものだ。
以前、テストの折に光をゴーグルで防がれたことがあった。だから前者の可能性は十分にある。
しかし後者については、辻褄は合うが現実的に可能かが気になるところ。目を使わず、耳やら何やらで地形や気配を感知することは、並大抵の人間には不可能だ。視力を失って、聴覚が逸脱したという話は聞いたことがあるが・・・
「前者だったら仮面を取れば済む話。けど後者ならどう対応するか…」
簡単に言ったが、そもそも仮面を取ること自体厳しいものがある。何せ辺りは霧。相手がどこから来るか把握できない限り、仮面に手が届くこともない。
そして後者となると、更に攻略の難易度が上がる。目を使わないため、伸太郎の光は完全に通用しないのだ。単純な格闘なら、間違いなくミストに軍配が上がる。
「だったら、霧を出てやる…!」
そう意気込んで、伸太郎は走り始めた。何よりの元凶は霧なのだ。それさえなければ、伸太郎にもまだ勝機はある。
「…がっ!」
しかしミストがそれを見過ごすはずがない。どこからともなく現れた脚に、伸太郎は蹴飛ばされる。
しかも不運なことに、飛ばされた身体は木の幹に激突してしまった。
「痛った・・・え、木?」
ぶつかった背中を擦りながら、伸太郎はふと思い直した。
霧の中で見えなかったとはいえ、ここは森の中。闇雲に駆けていては、木にぶつかる可能性もあって危険である。
「木・・・何かに使えないか?」
伸太郎は木を用いて上手く戦えないかと思考する。
しかし、隠れたところで相手からは丸見えだし、木登りは経験がない。かと言って、切り倒したりもできないし、強いてできることは燃やすことくらい・・・
「…この際、何でもやってやるよ」ボワァ
伸太郎は右手に炎を灯し、その手でそっと木の幹に触れた。直後、炎は瞬く間に木を覆っていく。
そして無論、ここは森だ。一つの木が燃えたならば、他の木だって燃える。よって、伸太郎らが居る一帯はパチパチと音を上げながら火の海と化した。
「く、さすがに熱いな…」
いくら火耐性があるとはいえ、ここまで火が広まるとさすがに辛い。チリチリと
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