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れなかった声色が、わずかな感情を帯びるがそれが何かは分からない。
『私の目的は、そのどちらでもない。それどころか、今の私は、すでに一切の目的も、理由も持たない。なぜなら……この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。この世界を創り出し、観賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた』
短い間をおいて、無機質さを取り戻した茅場の声が響いた。
『以上で、《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤーの諸君の――健闘を祈る』
次の瞬間に、広場上空から赤ローブは消えて、赤く塗りつぶされた空は、橙の閃光を引いて、夜に近づきつつあった。
消え去った赤ローブは、どれだけ待っても二度と、現れなかった。
今更ながらに状況を理解した(無論俺もだった)プレイヤー達は、本来もっと早く取るだろう行動を、遅まきながらに起こした。
「嘘だろ!? ログアウトさせろよ!」
「いやあああ!!」
「ふざけるなよ! これから約束があるんだ!」
「出してよ!! ここから出してぇ!!」
俺は、叫びこそしなかったものの、かなりの恐慌状態に陥っていた。今後当分の間、現実世界に帰ることは出来ない。その認識が確定したものとなって、膝が震えだした。
しかし、取るべき行動は、早かった。今のうちに宿を取っておかないと、寝床はあっという間に埋め尽くされる。いくら街が広いといっても宿屋の場所は限られている。ならば早めに宿を取るべきと、焦りながらもそう思った。
恐慌状態にある他のプレイヤー達を尻目に、広場からもっとも近い宿を探して、しばらくそこで過ごすことにした。
俺は、最初に覚えたソードスキルの快感も忘れて、ひたすら約二週間、宿屋に閉じこもっていた。
外部からの助けは、どれだけ待ってもこなかった。
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