75部分:第七話 二人きりでその五
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第七話 二人きりでその五
「卑しい方でもありません」
「なら。封を開けて」
「いいと思います」
それもいいというのだった。
「これは」
「わかりました。それでは」
こうしてだった。真理はだ。
自分の部屋に入って手紙の封を切った。そうして中を出してだ。
手紙を読んだ。そうしてだった。
手紙をだ。自分の机の中、それも一番奥に収めてから部屋を出てだ。婆やに尋ねたのである。
「あの、土曜日ですけれど」
「土曜日ですか」
「街に出ても宜しいでしょうか」
こう尋ねたのである。
「そうして宜しいでしょうか」
「街にですか」
「はい、喫茶店に行きたいのですが」
そこにだというのである。
「宜しいでしょうか」
「喫茶店ですか」
話を聞いてだ。婆やはだ。
少し怪訝な顔になってだ。こう真理に話した。
「あの、珈琲や紅茶でしたら」
「家でも飲めますね」
「はい、何時でも飲めますが」
真理に話す。その少しそうなった怪訝な顔でだ。
「それでも。行かれるのですか」
「いけませんか、それは」
「違う味を楽しまれたいのですか?」
婆やはそう考えた。真理の言葉にだ。
「それでなのでしょうか」
「はい、それでなのですけれど」
「成程。そうですか」
真理の言葉を聞いて言う。しかしだった。
彼女は気付いていなかった。真理の目がやや泳いでいることに。そしてだ。
そのうえでだこう話すのだった。
「では」
「はい、それでは」
「楽しまれて下さい」
こう真理に話した。
「是非共」
「有り難うございます。それでは」
「ただ、です」
「ただ?」
「くれぐれもです」
彼女もだ。こう言うのだった。
「御気をつけ下さい」
「街にですね」
「御存知とは思いますが」
前置きもする。しかし言う言葉は同じだ。
「街には色々な人がいます」
「それはわかっているつもりですが」
「やくざ者に絡まれれば厄介です」
婆や心配しているのは彼等についてだった。
「ですから、そうした者にはです」
「避けるのですね」
「最初から怪しい場所には入らないで下さい」
心配そのものの顔で真理に話すのだった。
「本当にです」
「はい、それは」
「本当にですよ」
とにかく心配でだ。彼女に言い続けるのだった。顔にもそれが出ている。
「御気をつけ下さい」
「そうですね。本当に」
素直な真理はだ。婆やのその言葉に頷く。そうしてだ。
本当にだ。心に刻んで言うのだった。
「それだけは」
「何かあればです」
その心配は婆やの頭の中から消えない。言わずにはいられないのだった。
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