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儚き想い、されど永遠の想い
74部分:第七話 二人きりでその四
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第七話 二人きりでその四

「本当に。怪しい輩にはです」
「気をつけろだね」
「アナーキストだけではありません」
 いささか保護者めいていた。だが本人はそれに気付くことなくさらに話す。
「やくざ者もいますから」
「彼等もだね」
「世の中は危険に満ちています」
 いささか大袈裟なだ。佐藤の今の言葉だった。
「ですからくれぐれもです」
「用心は必要だというんだね」
「はい、ですから」
 また言う彼だった。
「何かあればです。その時はです」
「戦うんだね。剣道や柔術で」
 義正はそうしたものを身に着けているのだ。どちらも中々の腕前だ。
「そうしろというんだね」
「いえ、違います」
 それは否定する彼だった。そうではないというのだ。
「そうではありません」
「違う?」
「はい、違います」
「じゃあどうしろというんだい?」
「走るのです」
 そうしろとだ。佐藤が言うのはこのことだった。
「ここはです。そうするのが一番です」
「ここで走るということはつまりは」
「はい、逃げるのです」
 そうしろというのである。これが佐藤が今義正に勧めることだった。
「君子危うきに近寄らずです」
「だからなんだ」
「確かに護身用のものも持っているべきですが」
 それを言うのは忘れなかった。用心に用心を重ねている。
「ですがそれでもです」
「逃げるのが一番なんだ」
「御一人ではそうして下さい」
 佐藤の言葉に限定が入った。
「ですが御一人でない場合は」
「その場合は?」
「必要な限り戦って下さい」
 そうしろというのである。このことも話すのであった。
 そうした話をしてだった。義正はその店に行くことにしたのだ。
 義正はその土曜を待っていた。その手紙は。
 真理は手紙を受け取った。しかしだ。
 そこに差出人は書かれていなかった。その手紙の封を見てだ。
 婆やはだ。怪訝な顔になってだ。彼女に言うのだった。
「あの」
「あの?」
「この手紙は危ういのでは」
 こう言うのだった。真理に対してだ。
「差出人が書かれていません」
「そうですね。ただ」
「ただ?」
「この字を見ますと」
 封の表に書かれているその字を見て話すのだった。それは他ならぬ真理の名前が書かれていた。無論この屋敷の住所もである。
 それを書いている毛筆の黒い字を見てだ。彼女は婆やに話したのだ。
「奇麗ですね」
「そうですね。確かに」
「流麗で。整った字です」
「達筆ですね」
 婆やもそれは否定しない。確かにであった。
 その字は達筆と言っていいものだった。その字を見てだ。
 真理はだ。こう言うのだった。
「字はその人が出るといいますね」
「はい、字にこそです」 
 それはその通りだとだ。婆やは答
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