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儚き想い、されど永遠の想い
70部分:第六話 幕開けその十四
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第六話 幕開けその十四

「それは何故」
「それは」
「それは?」
「ふとしたことから気付いたのです」
 それでだと述べた真理だった。義正のことは隠しての話だった。
「それでなのです」
「ふとしたことですか」
「はい、恋愛があり」
 義正とのことから。そう考えるようになったことは話しはしない。だがそれでもだ。実感できたこととして話をしていくのであった。
「それからです」
「成程。ですが」
 麻実子は真理の話を聞き終えて。自分の口から話した。
「そのお話ですと私も」
「私もですね」
 喜久子もここで話す。
「芸術を生み出せますね」
「恋愛により」
「そうです。勿論私もです」
 真理自身もだと。こうも話すのだった。
「人は誰でも芸術家なのです」
 こんな話をしてだ。帰路につくのだった。そうしてだ。
 自分の部屋に入る。その出迎えた婆やにだ。こんな話をした。
「御願いがあるのですが」
「御願いとは?」
「はい、レコードを買って宜しいでしょうか」
 話したことはこのことだった。
「レコードをです」
「レコードをですか」
「蓄音機から。そのレコードをです」
「またどうしてでしょうか」
 婆やは首を傾げさせて真理に問い返した。
「どうして。また急に」
「いけませんか?」
 怪訝な顔になっている婆やに言った。
「それは」
「いけないということはありませんが」
「では宜しいのですね」
「はい。ですがレコードですか」
「音楽がそれでも聴けるのはいいことですね」
「私は音楽については。三味線位しか」
 知らないというのである。音楽に疎い者はかなり疎くなってしまう、レコードのない時代ではそうなってしまうのだ。
「知らないのですが」
「三味線もレコードで聴けますよ」
「あれまあ、そうなのですか」
 婆やは真理のその話に目を見開いて驚きの言葉を述べた。
「それは凄いですね」
「婆やも聴きますか?」
 真理は婆やもどうするかと問うた。明らかに誘いである。
「どうしますか?それで」
「そうですね。何時でも聴けるのですよね」
「はい、そうです」
 また答える真理だった。
「その通りです」
「左様ですか。それでは」
「では。蓄音機とレコードを」
 真理は婆やが自分の話す方に傾いたのを見てさらに言った。好機と見てだ。
「買いましょう」
「はい。しかしこれまた随分とはいからですね」
「はいからですか」
「そうですよ。はいからですよ」
 前から使われている言葉を出して述べる婆やだった。
「そんな。蓄音機とレコードなんて」
「はいからですか。そうかも知れませんね」
「けれど。音楽が何時でも聴けるというのは」
 そのことについてはだ。婆やは次第に嬉しそうな顔になった。
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