これが漢の戦車道 G
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鹿次のいた地球でも突然変異と言っていいクルーがあやつる標準的中戦車あんこう号とかいう怪物戦車が疾走し、行進間射撃を繰り返す。
「恐怖」「怪奇」という名前はむしろそっちにこそ似合いそうだ。
マンガじみたピンクのあんこうのエンブレムが、人をバカにしている。
こいつ自体はむしろリアルのあんこうを思わせる、どう猛そのものの戦車だ。
それとデュエルを演じるのはM4A2の改造E8仕様という、せいぜいティア5のホラー号。
A3ではなくA2ということで、イージーエイトでありながらティア5にとどまっている戦車だが、敵は明らかにティア9か10じゃないかと鹿次は思う。
オーバーラップ転輪は、たしかに大戦期のドイツ戦車の特徴だ。
鋳造パーツがほとんどなく、正面装甲には互いに組み合わせたような溶接痕がある。
履帯はまちがいなく、ティーガーUのものと同じだ。
だが、装甲の傾斜は戦中ドイツのそれより鋭い。
そして大戦型戦車の共通の弱点である、車体前部機銃がない。
ティーガーUよりも大きい第三世代並みの車体に、アンバランスなほど小さな砲塔。
いや、小さいと見えるだけで、本当は今乗っているイージーエイト以上の大きさなのだ。
その砲塔もパワーに見あわないコンパクトな機関室の恩恵で、車体中心に位置している。
動きからすれば、ティーガーUよりも10トン以上軽いだろう。
つまり戦闘室の容積が、広いといわれるシャーマンよりさらに広いのだ。
そしてパンターのような「直線番長」などではない。
加速、コーナリング半径とレスポンス、それらがイージーエイトを上回っている。
あの図体で。
(あんな戦車が、終戦以前に存在していたとは……)
それは鹿次だけではなく、ホラー号のクルー全員が等しく思ったことだった。
すでに彼ら以外の僚友9騎はすでに討ち取られ、クルーたちは絶命寸前の罰をくらって搬送中。
敵はお化けあんこう含めて5騎とも健在。
いったいどうなっているんだとは、女子のひ弱さをよく知る選手たちだけではなく、関係者も観客全部も、中継を見ているファンたちも、等しくそう思っているにちがいない。
そう思わないのはホラー号のなかでも、彼女たちの力を見抜いた車長の「戦争親父」と敵が何者かをよく知っている「あっちの地球から来た」鹿次だけだ。
単騎になってしまった以上、もはや奴の相手はしていられない。
戦争親父は腹をくくった。今逃げなければ囲まれて終わりだ。逃げるしかない。
「装てん、榴弾3発信管瞬発。砲手、あのバケモノの前に3発ともまいてやれ。
タイミングは俺がいう。囲まれる前に逃げるぞ!
操縦、ガバナー全開(リミッター外し)の準備をしておけ」
戦争親父はクルー
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