これが漢の戦車道 G
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
41は、ちょうど並木道が十字路になっているところで、ケツを振りながら左折する。
ホラー号のドライバーも遅れてはならじとばかり、巧みな荷重移動でもっと速く曲がる。
A41はホラー号の前方30mにいた。道は直線。ならば停止射撃だ。
しかしホラー号は戦争親父が「止まれ」と叫ぶ前に、いきなり急制動。
ドライバーが「俺は何もしていねえ」という顔をしている。
それと同時に、A41の姿が「文字通り」消えた。
その時になってやっと、戦争親父は自分の戦車を襲った異変に気がつく。
砲塔の左右に大木が生えていて、その幹同士にぶっといワイヤーが張られている。
戦車牽引用のワイヤーだ。これに強制的に止められたのだ。
そしてよく見ると、左右の木の向こうにいるのは、お化けあんこうと蝗。
ホラー号と逆向きに止まっている。
そして自分たちが走っていた道は、すぐ先で急な下り坂になっていた。
つまりこのくそったれ姉妹はお互いの戦車の後部フックにワイヤーをつないで、ピンと張らずに地面に垂らして待っていたのだ。
そしてA41が通りすぎたあとに2両とも前進。
ワイヤーは大木に引っかかって車体の高さに張られる。
即席ワイヤートラップのできあがりだ。
重戦車を牽引できるヘビーデューティーワイヤーだ。
30トンのイージーエイトなどあっさり止めてしまう。
そして、こいつらはホラー号の砲塔に主砲の砲身を向けている。
前方からは、さっき下っていった斜面をA41が逆に登ってきた。
ホラー号の主砲の俯角のさらに下から。
さらに真後ろには、2両のジャンボウが退路を断って、こちらを狙っている。
砲塔も大木のせいで回せない。
「終わったな……」
戦争親父はもうどうにでもなれとしか思えない。
まさか、ワイヤートラップなんて真面目にやるとは。
しかもこの手際の良さ、悪魔でも憑いているにちがいない。
それは確かに事実であるが、その悪魔は今回はまったく普通に戦っただけだ。
人間に、悪魔より恐ろしいのがいただけでしかない。
「じゃあみんな、初めての負けだ。
最後ぐらい盛大にやっつけられようぜ!」
戦争親父のセリフで、鹿次は我に返った。
そうだ、撃たれたらえげつない処刑装置が作動する。
今まで負けたことがないのだから、きっととんでもないのが仕掛けられているにちがいない。
鹿次がやることは、もはや一つしかない。
「白旗白旗白旗〜〜〜〜!」
目を血走らせて手旗信号旗をさがす鹿次。
なんと、それは通信手である自分の真横にあるではないか。
鹿次は、紅白旗の白い方を握り、ハッチを開ける。
「テメエ! 何しやがる」
モヒカン操縦士が止めようとしたが、もう遅かった
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ