三話〜盤外戦あいVS銀子@始まり〜
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突っ込んでも、あいちゃんが頑なになるだけなのは、わかった。
俯く彼女の頭に、そっと手を置くと、サラサラの髪の上から頭を撫でて、優しく問いかける。
「事情、ゆっくりで良いから聞いても良い?」
「んー、んー…………はい」
暫く顔を赤くして口を開くのを我慢していたが、五分ほど撫でて返事を待つと、彼女は口を開いてくれた。
つまりは、こういう事らしい。
最近の俺の活躍?を見たあいちゃんが、最近の自分の仕事を見て心配になり(倒れた事かな)両親に弟子になりに行きたいと言った所、祖父が道楽で将棋をしていて苦労してきた母親が猛反対。
俺の事を今まで書いた手紙と共に説明しても駄目だの一点張りなので、喧嘩別れして、自分に甘い父親からお金を貰い、来たと。
一応、自分がこのマンションに着いたと同時に父親には連絡したらしい。
なんというか…………判断に困る。
ここまで一人で来る行動力は立派だが、明らかに弟子にする、しない以前の話である。
というか、これ現状ただの
家出じゃない?
まあ、常識的な大人なら、すぐに親に連絡して終わりである。
ただ、八一は残念ながら、まともな大人では無かった。
正直言って、嬉しかった。
話を聞けば、俺が旅館で指した日から俺を目標に詰将棋やネット将棋で腕を磨いてくれていたらしい。
そんなに慕ってくれているのに、ここで返すのは、正直、もったいなかった。
手招きして、荷物を置いて貰うと、長旅で疲れているあいちゃんのために風呂にお湯を入れる。
また、父親から説明はいっていると思うが、念を入れて一応師匠にはメールをいれた後、奥の和室に将棋盤と座布団を用意した。
さて、では折角来てくれた弟子を見てあげるとするか。
「あいちゃん、好きに打ちなさい」
そう言って先手を譲る。
二手、三手。
盤面に現れたのは…………
「あい掛かりか…………」
俺の十八番、得意とする戦術が現れていた。
まあ、良い。俺相手にその戦術を出す度胸は買おう。
だが、大切なのは、その中身だ。
互いに駒を動かす音が響く。
小一時間立つと、盤面は圧倒的に八一に有利な形で動いていた。
当然だ。タイトルにすら手が届いた自身の得意陣形である。指導のため、分かりやすい盤面を見せるために遠回しな打ち方をしたが、この状況にするのは容易であった。
(さて…………問題はここからだ)
将棋では、優勢な時よりも、むしろ劣勢の時にその打ち手の本質が出る。
詰将棋や手紙のやりとりでは見えないものを真剣勝負の中で見出だす。
彼女が俺の只のファンか、それとも弟子になるだけの才を持つものか。
(この一手で、見極めよう)
ある程
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