三話〜盤外戦あいVS銀子@始まり〜
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「君があい…………ちゃん?」
「はい!」
元気良く挨拶をする少女に、何かが脳裏をよぎる。
彼女の事は覚えている。
そりゃあ、竜王戦で戦った最終戦の会場の女将の一人娘だ。目にするチャンスはいくらでもあっただろう。
だが、脳裏によぎる記憶は…………
「んっ…………あいちゃん、もしかして俺達、何処かで会ってない?」
「はい!」
顔に手を当てながら、思い出そうとする八一に、あいは笑顔で同意した。
その笑顔に俺の脳裏で、あのときの記憶がフラッシュバックする。
ーーーーーーーーー
竜王戦、終盤。
十八手後の詰みを読みきった俺は、その手を指す前に、手洗いで息を整えていた。
洗面所前の大きな鏡の前で、その手に間違いはないのか、自分の手に希望的観測はないかをギリギリまで脳裏で繰り返す。
よし!間違いはない!
そう結論付けた俺は、盤上の戦いに戻るため、疲れた体を引摺りながら、体を会場に向ける。
やべえ…………頭が熱い。
予想以上に、脳を酷使した影響か、会場までの短い距離が無限に感じる。
その最中、見えたのは、自分に笑顔でコップを差し出す小さな影。
そうだ、俺はあの時君に…………
ーーーーーーーーー
「救われたんだ」
くれた冷たい水もそうだが、それ以上に、君の笑顔の『応援してます』という言葉に救われた。
あの日、自信を持って終局まで持っていけたのは、間違いなく、あの言葉も助けになった。
だから、八一は改めてあいにお礼を言う。
「ありがとう、君のおかげだ」
「っいえいえ、お師匠様は一人でも大丈夫でしたよ」
「いや、君の優しさは、確かに俺の助けになったよ。ありがとう」
顔を赤くして謙遜する彼女に、重ねて八一は言う。
無論、彼一人でも、なんとかあの竜王戦に勝てたかもしれない。
だが、その勝敗とは別に、あの日、あの時に、雛鶴あいという一人の少女に八一が救われた事は、間違いなく事実であった。
思い出したあの時の礼をのべると、尚更疑問が浮かぶ。
「えーと、あいちゃん、確か実家の旅館は、凄く遠く無かった?」
確か記憶通りなら、石川県辺りにある旅館だったはずなんだけど…………
「はい、でも一本で大阪に行ける電車ができたので、意外と早く着けました!」
「へぇ、そうなんだ…………じゃなくて!」
納得しそうになり、慌てて突っ込む。
いや、駄目でしょ。
「親御さんの許可は取ったの?ランドセルを持って来てるってことは、学校から直接来たんでしょ?」
そう伝えると、分かりやすくあいの目が動く。
はぁ、訳有りか。
心の中でため息をつくも、自分は歳上。
ここで、鋭く
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