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歌集「冬寂月」
三十

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 雨雪の

  落つるは冬の

   うしろ髪

 思ひそ残す

    戀もありしや



 真冬に戻ったような陽気で、雪さえもちらついていたが…これは冬の後ろ髪でも掛かったのだろうか…。

 冬もきっと…忘れ得ぬ恋があったのかも知れないな…。

 私のように…。



 たち別れ

  花を散らして

   飛ぶ鳥の

 行く末までを

    知る人ぞなし



 驚いて飛び立った鳥が花を散らす…。

 その鳥がどうなるかなど、行く末を知る人がいないのと同じように…もう会うことのない人のことを知ることはないのだな…。

 あの人が私のことを知ることがないように…。




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