天使のような子の幼馴染と出会った
[1/7]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「お、おい……本当にμ'sの皆さんと会えるのかよ?」
「だから俺もよく分からないんだって」
今日の間に何度聞いたか分からない翔真の質問を適当に受け流す。
──尤も、本当によく分からないんだけど。
時刻は午後5時を過ぎた。俺と翔真はとある喫茶店で南さんが来るのを今か今かと待ち侘びていた。
窓際のテーブル席。対面には誰も座ってない空席がある。言うまでもないが、南さん達の席である。
「……あ、そういえば」
「おっ、なんだよ?」
「南さん、連れてくるのは全員じゃなくて幼馴染だけだよ」
「ことりちゃんの幼馴染……ああ、穂乃果ちゃんと海未ちゃんか!」
“穂乃果ちゃん”と“海未ちゃん” 。それが南さんの幼馴染の名前。中でも穂乃果ちゃんはμ'sを作った張本人だという。
「μ's全員に会えないのは残念だけど、それでも穂乃果ちゃんと海未ちゃん、それにまたことりちゃんに会えるんだ! これほど幸せなことはないぜ!」
「……そりゃあ良かったな」
相変わらず能天気にわくわくしている翔真。全く、こちとら胃が痛いってのに。
胃が痛い理由──それはμ'sのプライベートに関してのことだ。μ'sのような人気スクールアイドルが、易々とプライベートで男子と会って良いのだろうか? ファンの皆さんに反感を買ってμ'sの人気が落ちるかもしれないというのに。今回は南さんの幼馴染だけだからまだマシだけど。
どうしてこうなった。そもそもの始まりは南さんのあの一言だった。断ることも出来たんだけど、結局今回も南さんに負けてしまった。
──本当に、女の子ってずるいと思う。自分の弱みを見せて、それで男子の心を鷲掴みにして。
南さんの場合、それを無意識でやっているだろうから尚更質が悪い。
金輪際、女の子には勝てないだろうなと半ば諦めながら、今朝の出来事を思い返すことにした。
◆
「──はい?」
南さんの放った言葉の意味がよく分からず、俺は思わずその場で立ち止まってしまった。
「えっと、その……。私を助けてくれた神崎くんをみんなに紹介したいの。あ、もちろん前原くんもだよ?」
ああ、なるほど。そういうことか。なるほどなるほど……。
──って、納得出来るかっ!
いや、寧ろこれで納得出来る方が凄いと思う。ひとまず落ち着いて。俺も質問していこう。
「つまり……μ'sの他のメンバーと会うことになるんだよね?」
「そういうことになるかなぁ」
首を傾げ、考える素振りを見せる南さん。
可愛い……一つ一つの仕草が可愛いけど、今はそんなことを気にする余裕などない。段々と焦りが見え始めてきたのを嫌でも自覚する。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ