EX回:第51話<不安な初陣>
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「では私は動くので椅子は良いです」
そう言いながら青葉さんはバッグを下ろして撮影の準備を始める。
私は祥高さんの隣……ブルネイの直ぐ横の椅子に座った。
指揮官である私たちと秘書艦が一列に座り、その前に寛代を始め、他の艦娘たちが座った。
ブルネイは時計を見た。
「そろそろだな」
彼は無線担当を見る。
すると雑音に混じって無線機が艦娘たちの声を拾い始めた。
「GO!」
『行きます』
「ぽいぃ」
「行くでぇ」
聞きなれた声と初めて聞く声も混じる。
(相手の艦娘だろうか?)
寛代を始め、祥高さんも耳を傾けるような素振りを見せて反応している。
そうか彼女たちは美保鎮守府の艦娘たちの無線は拾えるんだよな。
ブルネイが言う。
「俺たちの艦娘は今までの『不完全レシピ』だ。おまけに、まともな艦娘相手の実戦は初陣」
「え?」
思わず聞き返した。
「まぁ……最初はとりあえず美保の艦娘との小手調べだな」
「そうか……」
ブルネイも不安そうだが私も不安だ。
何しろ私たちは未来の「演習」の敗北の記憶も新しい。その状況下でブルネイの試作量産型の艦娘たちを相手にするわけだ。
技術参謀やブルネイが盛んに量産型艦娘には問題があるようなことを繰り返す。
もっとも手練の艦娘と素人の艦娘を同時期に相手に出来るのは貴重な経験だ。
これは美保にとって良いことか……。
「美保鎮守府にとって……」
そう呟きながら技術参謀を連想した。
そういえばこの演習を企画したのは彼女だ……タイムスリップは偶然だとしても、こういう状況は彼女が仕組んだのだろうか?
(まさか……)
ふと隣の祥高さんを見たが彼女は無線を傍受しているらしく、ジッと水平線を見ていた。
やがて秘書艦の視線の先……遠くの海上に艦娘たちの航行する姿が見えた。
ほどなくして埠頭に、吹雪に案内された技術参謀と補助の夕張さん、ブルネイ側の技師もやってきた。
技術参謀と技師は各々、無線機に近い前列に着席した。何か会話をしながら彼らは双眼鏡を取り出している。
「わぁ」
歓声を上げたのはブルネイの吹雪だ。
案内係であることを一瞬忘れてワクワクするような表情で演習を眺めている。
そんな感じは、まさに「吹雪」だ。だが彼女も量産型だ。
「……」
何気なく隣のブルネイを見ると彼は海上ではなく吹雪を見詰めている。
なぜか不安そうな視線を送っているのが気になる。
(私の考え過ぎだろうか……)
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