一話〜ヤンデレホルダー八一〜
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棋界の誰もが目指す頂点の一つ、竜王。
そのタイトルをかけた勝負に勝った一月後、八一は竜王となって、初めて『神』に挑んでいた。
『おい!すげえぞ竜王、この盤面で名人にくらいついてやがる!』
『劣勢からギリギリ持ち直しての詰めろ、詰めろのカウンター、お互いに持ち時間も無いのによくやるよ』
とあるテレビ局が開催した将棋トーナメント、その三回戦で八一は、初めて『神』に挑んだ。
若輩のためタイトル戦等で戦う事が難しい相手であるため、プロ棋士になって初の対戦。
『神』と呼ばれる名人、その圧を総身で受けながら、打つ、打つ、打つ。
頭は沸騰寸前、体は疲労困憊。
そんな中、八一は気力だけで指し続けていく。
そして……
「八一!」
「…………はっ!」
その声に目が覚める。
そうだ、俺はあの日食らいついて、食らいついて…………最後過労で自分が気を失って倒れ決着がついた。
別に自分が他人と比べ特別虚弱体質だと言うわけではない。
言い訳になるかもしれないが、将棋を、しかも格上と指すというのは、凄まじい負担を脳にかける。
更に、自分はまだ若干16歳で経験も浅く、勝つためには先人の何倍も打ち筋を研究しなければならない。
そういったものの積み重ねが、体調管理には気を付けた自身の体を知らず知らずの内に蝕んでいたらしく、結果、倒れた。
正直、倒れる数分前までは終着までは打てるつもりだったんだが…………
竜王戦、テレビ局トーナメントの名人戦と立て続けに行った試合とそれに伴う研究に体がついていかなかったらしく、恥ずかしい限りだ。
竜王戦から3ヶ月、あの試合から2ヶ月もたっているのに、未だ公式戦で負け越していたり、こんな夢を見るのは未熟な証。
竜王として、恥じない打ち手とならなければ、打った相手に申し訳がない。
そう思ってふと手を見ると、横からほっそりとした白い手が、自分の手を握っているのが見える。
ゆっくりと横をみると、其処には見慣れた顔が。
「姉弟子、今日は学校では?」
空 銀子。
『浪速の白雪姫』という渾名がつけられた、俺の姉弟子。
その渾名の由来となった、白い艶やかな髪をショートカットにした、透き通るほど白い肌の美少女。
彼女のために雑誌で特番が組まれるなど、正直、ぽっと出の竜王の俺なんかより、よっぽど有名人だ。
ただ、彼女は中学卒業と同時に棋界に入った俺と違い、まだ中学生。
平日は学校のはずだが…………?
「八一、今日は終業式」
ああ、だからか。
納得をすると、礼を言ってそっとその手を離そうとした。
だが、その手は離れない。
何故か、最近の姉弟子はこういうことをする。
「姉弟
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