第十一幕その十
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「私にしても」
「奈良の神様の使いとしては」
「とてもなんだ」
「そう思ってくれたら嬉しい」
「そうなのね」
「非常に。ただ一つ」
ここで苦いお顔で言った白鹿でした。
「あのマスコットだけは」
「マスコット?」
先生は白鹿のその言葉に目を瞬かせて返しました。
「っていうと」
「何といいますか平城京一三〇〇年記念からの」
「ああ、せんと君だね」
「あれはどうもです」
白鹿は難しいお顔で言うのでした。
「私としましては」
「好きになれないんだ」
「マスコットキャラ、ゆるキャラというよりは」
どうにもというのです。
「妖怪に見えます」
「ああ、あのマスコットはね」
「もうそうよね」
「あれ妖怪だよね」
「どう見ても」
「あの外見はね」
動物の皆もこう言います。
「もう妖怪だよ」
「どう見ても」
「何であのマスコットにしたのかしら」
「センス疑うよね」
「知事さんが決められたのですが」
白鹿は今度は苦いお顔になっています。
「そこから定着してしまいました」
「今もだからね」
「完全に奈良県の顔になってるよね」
「気持ち悪いって言われながら」
「それでもね」
「他のマスコットキャラやヒーロー達はともかく」
そちらはいいというのです。
「あのキャラだけは」
「どうにかならないか」
「深刻な問題なのね」
「奈良県にしては」
「どうしても」
「今はそのことで悩んでいます」
奈良の神の使いとしてです。
「他にいいキャラがいるといいますのに」
「僕はどうも言えないね」
先生は白鹿に困ったお顔で言いました。
「どうにも」
「そうですか」
「奈良に住んでいないからね」
だからだというのです。
「このことについては」
「左様ですか」
「白鹿さんには悪いけれど」
「いえ、悪くはありません」
それは否定した白鹿でした。
「決して」
「そう言ってくれるんだ」
「はい、奈良におられないのならとです」
「意見を言わないことはだね」
「それもまた一つの判断です」
「だからなんだね」
「無論どうかと言われてもです」
そしていいという意見もです。
「一つの意見ですが」
「それでもだね」
「言わないというのも判断です」
それになるからというのです。
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