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ドリトル先生と奈良の三山
第十一幕その八

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「あの方にとっては」
「あの時は仕方なかったね」
「身分が低い人にもとても優しく」
 位人臣を極めた人なのにです。
「温厚な方でした」
「あれっ、随分物語と違うんだね」
「実際の清盛さんって」
「暴君ってイメージあったけれど」
「優しい人だったんだ」
「しかも政治力もおありで」
 そちらも備えていたというのです。
「あの方も素晴らしい方でした」
「そう言うと頼朝さんの方が悪い感じね」
「むしろね」
「あの人の方が」
「どうにも」
「私はあの人は好きではありません」
 白鹿は皆に頼朝さんをどう思っているのかもお話しました。
「どうにも」
「実際になんだ」
「あの人って暗いイメージ強いよね」
「義経さんのこともあるし」
「どうにも」
「はい、ですから」
 そのイメージが強くてというのです。
「私もです」
「頼朝さん好きじゃないんだ」
「どうしても」
「そうなのです、その頃は残念でした」
 源平の戦が行われていた時はというのです。
「戦の流れをこの大和、奈良で聞いていまして」
「何というかね」
 先生もそのお話を聞いて言うのでした。
「当時のお話を聞くと」
「それもまた、ですね」
「学問になるね」
「そうですね」
「それでそのことも」
「はい、油断していますと」
 かなり昔のことなので。
「忘れてしまいます」
「そうだね」
「八百年か九百年前のことですが」
「かなり前だから」
「文献を読んで」
 そうしてです。
「思い出してもう一度です」
「思い出すんだね」
「そうです、聖徳太子のことも」
 この方のこともというのです。
「どうにもです」
「記憶がだね」
「混乱しています」
 そうだというのです。
「本当かどうか」
「真実はだね」
「わからなくなっているところがあります」
 どうにもというのです。
「文献を読みましても」
「肝心のその文献がね」
「はい、伝説も多く」
「そのせいでだね」
「聖徳太子に関しては」
「伝説とだね」
「混ざっています」
 史実がというのです。
「そうなっています」
「聖徳太子でそうだから」
「三山のことになると」
「もうそれこそなのね」
「記憶にない」
「完全に消え去っているんだ」
「そうです、ですから先生に論文を書いて頂けれると」
 そうしてくれると、というのです。
「そこからヒントを得られると思い」
「有り難いんだね」
「そうです」
 実際にというのです。
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