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ドリトル先生と奈良の三山
第十一幕その七
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「これって何気に凄いことなのよね」
「日本独自だよ」
 ガブガブは断言しました。
「その宗教で一番尊い方が他の宗教の聖職者になるなんてね」
「それが日本の法皇様ってことだね」
 チーチーも腕を組んで考えるお顔になっています。
「カトリックの法皇様とは全く別だね」
「あと正教の場合は皇帝さんが一緒だったね」
「確か皇帝教皇主義だったわね」 
 チープサイドの家族のお話も以前先生が教えてくれたものです。
「そうだったわね」
「確かね」
「そうだよ、あちらは聖俗の権力を一体化させて統治力を強める為の政策だったんだ」 
 先生はこちらのお話をするのでした。
「だから皇帝が教皇つまり法皇様でもあったんだ」
「それで日本の法皇様は出家された上皇様」
「そうだったよね」
「平安時代かなりおられたわね」
「後白河法皇もそうだったし」
「あの方ですね」
 後白河法皇と聞いてです、白鹿はこう言いました。
「あの方は有名ですね」
「平家物語でもね」
「はい、今様も詠われていましたし」
「今様?」
 そう聞いて動物の皆は首を傾げさせました。
「それ何かな」
「急に出て来たけれど」
「何なのかしら」
「和歌みたいなもの?」
「詠うっていうから」
「そうですね、歌なのは確かです」
 実際にとです、白鹿は動物の皆にお話しました。
「あの歌は」
「そうだったの」
「実際に」
「和歌とは別の歌で」
「その法皇様はそれがお好きだったの」
「その今様が」
「そうでした、色々と陰謀家とも言われていますが」
 平家物語では特に有名です、このお話の中では法皇様の行いに多くの人が振り回されて大変なことにもなっています。
「今様を謡われて気さくな一面もあられました」
「そうだったの」
「そうした方だったの」
「そんな昔のこともご存知なのね」
「流石に千年以上生きておられるだけはあるわね」
「あの方が二代目の大仏に目も入れられました」
 白鹿はこのこともお話しました。
「そうした意味でも覚えています」
「そうそう、二代目の大仏はあの法皇様が目を入れられたんだ」 
 実際にとお話した白鹿でした。
「初代が焼けてね」
「あの源平の争いで」
 白鹿はその時も思い出しました。
「そうなったけれど」
「それでもだったんだ」
「もう一度建立して」
「その法皇様が目を入れられた」
「一番大事なことをされたんだ」
「そうだったのです、ただ入道様も」
 白鹿はここで悲しいお顔になりました、その頃を思い出したお顔で。
「決して悪い方ではなかった、いえ」
「むしろだね」
「徳を備えた方でした」
 こう先生にお話するのでした。
「人としての」
「そうらしいね、実際は」
「はい、平家物語とは違い」

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