晩餐会 1
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を救った騎士爵様は服飾評論家でもあるのかしら」
若い女性が声をかけてきた。蜂蜜色の髪に青みがかった灰色の瞳。身なりからして給仕のたぐいではない。出席者の一員か貴賓として招待された、いずこかの貴族のご令嬢といった感じだ。
「それ、美味しそうね」
「味見しますか」
「お願いするわ」
「じゃあ、おなじものを頼む」
琥珀色の液体をひとくちすすった女性が吐息を漏らす。
「体が温まるわ。イテリアの冬にはもってこいね」
「だろう。温かいココアを入れても合うぞ」
「あなたの周り、ずいぶん人だかりができていたわ。人気者ね」
「こちらの知識を試して、下手なことを言ったら笑いものにしてやろうという衒学ぶった連中にたかられただけさ。それに人気者というのならあそこにいる姫様のことだろう」
「そのレニリア姫殿下の装いに不満があるみたいだけど」
「あのティアラがまずい」
「なにがまずいの?」
「大粒のアクアマリンとダイヤモンドが余計だ」
「どうして? 彼女の美をよりいっそう引き立てる装飾だと思うけど」
「完全に完全を合わせても、くどくなるだけだ。あえてなにかを欠けさせることが美を引き立てるんだ。それこそが、乙というもの」
「破調の美というやつかしら? それは東方人の考えかたね」
「昨夜もスーパーヒーロー着地についての考えの相違でおなじことを言われたな、レニリア姫。その扮装もペルルノワールとしての仮面のひとつなのか」
「……どうしてわかったの」
「言っただろう、人よりも気を読む術に長けていると」
「外見を変えただけではお見通しというわけね。あなたにかかるとファントム・マスクも形無しだわ」
蜂蜜色の髪をした貴族令嬢――。その正体は【セルフ・イリュージョン】が永続付与された仮面で変身したレニリアだった。
「王族としての公務を影武者に押しつけて、ペルルノワールとしての次なる標的の物色か?」
「ええ、豪華絢爛な貴族社会はひと皮剥けば民衆の生き血を啜る悪党たちが跋扈する魔界よ。民草の集まる場所と、こういうところ。至高と至弱、双方の姿を見定めて、ペルルノワールは獲物を決めるの」
「富める者から盗み、貧しき者にあたえる。貴族連中のふところにある宝石や金貨でいっぱいの袋が、ペルルノワールに盗まれるのを待っているな」
「でも、今日は義賊としての標的ではなく別の標的を見定めるために来たの」
「別の標的、とは?」
「闇鴉、あなたよ。昨夜のあなたの動きは実に見事だったわ。もしあなたがいなければ、ペルルノワールとはいえ難儀なことだったでしょうね」
「そりゃどうも」
「アルザーノ帝国はつねに強くて有能な魔術師を求めているわ。カモ・アキヨシ。あなた、特務分室に入るつもりはない?」
「ない」
「即答!?」
「姫とし
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ