晩餐会 1
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クェイド侯爵の館に駆けつけた宮廷魔導師団の面々は、そこかしこでたおれている使用人の姿を目にして通報が虚報や悪戯のたぐいでないことを確信した。
そしてホール内を埋め尽くす合成魔獣の死骸と、ごていねいにも【マジック・ロープ】とカーテンで二重に縛り上げられ、【スペル・シール】をほどこされた上に猿ぐつわまでされた館の主を発見した。
「いったいなにがあったんだ……。うん?」
意識を失ったその横に彼の罪状を書き連ねた書状が広がっており、この件は魔術がらみの案件を専門に対処する、帝国宮廷魔導士団特務分室にふさわしいと判断し、すぐに報告をした。
このことを機にクェイド侯爵の悪逆非道のおこないが暴露されるのであった。
授賞式はつつがなくおこなわれ、秋芳は名実ともに騎士爵となった。
晩餐会用のホールには五〇人は座れる長いテーブル、アルザーノ帝国の歴史が描かれた丸みを帯びた天井にはシャンデリアがいくつも吊り下げられている。
テーブルには純白のテーブルクロスがかけられ、そこにならべられた銀製の食器類は磨きこまれていて輝いている。ガラスの食器類は最高級のクリスタル製で、黄金製の枝つき燭台があちこちに置かれていた。
出席者ひとりにつきひとりの給仕がつき、用のない時は微動だにせず壁際に立っている、その姿は彫刻のようだ。
前菜はアカザエビと帆立貝の炭火焼き、エルダーフラワーやイラクサやラムソンなどハーブをふんだんに盛りつけたサラダ類、冬林檎のピクルス。
主菜はうずらの黒ニンニクとリーキの灰風味、イモと野生のキノコ盛り合わせ、羊肉とトマトの煮込み、鴨や鳩のロースト。
デザートはスノーベリーのシャーベット、レモンのチーズケーキ、サバイオーネで、メレンゲやサワークリーム、アイスクリームがたっぷりと添えられていた。
そして飲み物は山ほどのワインの他に、ブランデー、蜂蜜酒、各種リキュールやカクテル類。コーヒー、紅茶、東方の緑茶までも用意されている。
「前菜を左右非対称に盛りつけるなど、見た目や香り。食感の変化を楽しませる工夫がされている。味つけは少々物足りないが、この気配りはなかなかに乙」
秋芳は式典後の晩餐会のメニューに大いに満足した。
晩餐会というが、貴族たちの食事会はむしろ食事よりも出席者同士の会話がメインだ。
私的な食事会では夜通しおしゃべりに興じることもある。
おしゃべりは得意なほうではない秋芳ではあるが、京都で白足袋連中を相手にしていたこともあり、大人の対応は心得ていた。
「カリーダ・フーロについてはご存知かな?」
「プラド大公が彼女の絵を認めるまで、カリーダさんの作品は絵画として世に認識されなかったのは実に残念です」
「ふむ」
「プラド大公といえば、彼の集めた美術品をもとに
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