第五十六話
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―数時間後―
「よぉ、千尋。こんなところでなにしてんだ?」
俺が屋上でボーッとして落下防止の柵に肘を置いていると、聞き慣れた声が聴こえてきた。
「…………木曾こそ、何しに来たんだ?ちなみに俺は酔っ払いに絡まれたくなくてやって来た。」
俺の挨拶のあと、長門さんの乾杯の音頭で一斉に飲み始めた。そのあとは、お察しの通りだ。
ただ…………皆、俺達にここでの思い出を残そうとしている感じだった。実際、楽しかった。
「オレか?何となくだよ。」
木曾は俺のとなりにやって来て、柵にもたれ掛かる。
「…………ありがとな。色々と構ってくれて。」
俺は木曾にこれまでの感謝を口にした。やっぱり、こいつには本当に世話になった。
それを帳消しにしてもいいくらい、こいつには医務室送りにされたけどな!
「どうってことないさ。それより、こっちこそ礼を言いたいね。」
珍しく、木曾の声のトーンが少し低い。
木曾はこちらに体を向けると――頭を下げた。
「オレ達を守ってくれて…………ありがとう。」
「…………仲間を守るのは、当たり前のことだろ?」
俺は敢えて木曾の方を見なかった。木曾はそのまま続けた。
「オレはあの時、何もできなかった。日本海軍最強の軽巡洋艦とか言われてるのに…………情けねぇことに、立ち上がることすら出来なかった。」
それでも、と、木曾は続ける。
「お前は立ち上がって、オレ達を助けてくれた。本当に…………ありがとう。」
…………俺はそれでも前を見たまま、呟いた。
「俺は男だからさ…………女の子を守るのは当然だろ?」
うわぁ、柄にもねぇこと言ったなぁおい。
物凄く恥ずかしいんですけどこれ。なんで自分で罰ゲームしてんだよ。
「…………なら、春雨を絶対に守りきって、学校に行かせねぇとな?」
「…………あぁ。」
俺と木曾はそのまま、暫くその場に立っていた。
…………部屋に帰ったら、荷物の整理しねぇとな。
―執務室―
「大輝さんなら、どうしますか?」
拓海君は僕に神妙な面持ちで尋ねてきた。僕は目の前に置かれている資料に目を遠しながら考えてい
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