Fate Apocrypha編
聖杯大戦開幕 ─再会─
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本当にありがとう─
─ふふ。それ、私のセリフですよ、ウィス─
儚げにジャンヌは笑う。
手足は鎖にてつながれ、身体は木に強く拘束される。松明から灯された炎は瞬く間に足元を燃やし尽くし、ジャンヌの元へと迫る。
だが不思議と恐怖はない。自分は十分に救われた。これ以上求めるのは高望みというものだろう。
主よ。この身を委ねます。
ですが心だけは─
燃え盛る業火の中ジャンヌが最後に見たのは目をそらすことなく此方を見据えるウィスの姿だった。
途端ジャンヌの意識は暗転した。
過去を回顧するジャンヌ。
「─。」
此度の聖杯戦争は異常だ。ルーラーとして召喚されるはずが疑似的なサーヴァントとして現世に呼び出された。加えて自分が現在いるのは聖杯戦争が執り行われるルーマニアではなくフランスである。
これからルーマニアに向かわなければならないだろう。
─この場にウィスがいれば─
いや、よそう。希望的観測はいけない。ウィスに頼り過ぎだ。思えば生前もウィスに頼りすぎていたかもしれない。
ウィスは恐らく今なおこの世界のどこかで生き続けているだろう。ウィスに寿命という概念が存在しないことは知っている。
だが望まずにはいられない。せっかく現界したのだ。ウィスと再会し、言葉を交わしたい。いやもしかしたらウィスの方から自分に会いに来てくれるかもしれない。
そう、物語のヒーローのように─
「困っている私を助けに来てくれたりなんて─。」
ジャンヌの頬は妄想の余り緩みに緩む。
そんなジャンヌの前に空から一条の光が舞い降りた。
「─。」
現在進行形で想い浮かべていた当人の登場だ。
タイミング
登場の仕方
全てが完璧である。
ジャンヌの心情は言うまでもなく天啓にうたれたかのような感動と歓喜の嵐が到来していた。
「久しぶりだな、ジャ─」
再会の旨を此方に述べるウィス。だがウィスの言葉は感激のあまりジャンヌへと届くことはない。
荷物を投げ出したジャンヌはウィスへと勢い良く飛びついた。
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