Dr.くれはと一匹のトナカイ
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が汲まれた桶が置かれていた。
室内の至る所には医療の道具が散乱し、薬品の臭いが鼻の奥を刺激する。
自身の服装もいつの間にか寝間着に変えられていた。
体調もメリー号にいた頃と比較してもすこぶる良好である。
熱はまだ完全にはおさまってはおらず、倦怠感を感じるが先日までとは雲泥の差だ。
無事彼女の体調は回復の道を辿っていることは間違いないだろう。
「起きたか、ナミ」
そんな中、静かに病室の扉を開け、アキトが彼女の前に姿を現した。
「……アキト、ここは?」
未だに熱による影響で頬が赤いナミは悩まし気に尋ねる。
「Dr.くれはが住む城だ。俺がナミを抱えてこの場に連れて来たんだ」
「そうなの……」
ナミはどこか釈然としない様子で再び室内を見回す。
そんなナミの額に大きな掌の感覚が伝わった。
「……熱は下がっているな」
見ればアキトが瞳を閉じ、右手の掌を静かに自身の額に乗せていた。
掌越しに感じるアキトの体温
自身の額を覆うほどの大きさを誇る掌
その掌は修行の証とも言うべく頼もしさを感じさせる硬さを誇っている。
それら全てがナミにアキトを強く感じさせるものだった。
また熱が未だに残るせいか、アキトの掌を冷たくも感じる。
しかし、そんなことよりもアキトの顔が予想以上に近いことがナミの心にさざ波を立てていた。
ち…ちちッ…近い!
そう、近いのだ。
あと少し踏み込めば顔と顔がくっつきそうな程に
眼前のアキトの表情は真剣そのものであり、そんな邪なことを考えているわけではないことは分かっている。
だが、それ以上にアキトと自身の距離は近かった。
故に、ナミは混乱の極致に陥っていた。
「本当に良かった、ナミ。お前が無事で……」
自分のことを真剣に心配した様子で此方を慈愛に満ちた目で見つめてくるアキト
普段余り表情を変えないあのアキトがふわりと笑う。
「う、うん……」
アキトの優しさと笑顔がナミの心に深く突き刺さる。
ナミは絞り出すような声しか出すことが出来ない。
そんな混沌とした雰囲気な病室に珍妙な帽子を被るトナカイと思しき生物が入ってきた。
「お、おい、人間。お…お前熱は大丈夫か?」
「え?喋った?」
「うおおおおおぉー!?」
叫び声と共に病室の壁へと激突する謎の生物
「え?え?」
ナミは混乱することしか出来ない。
「落ち着きな、チョッパー!」
「ド…ドクトリーヌ」
今度は酒瓶を片手にサングラスをかけた女性が現れた。
「ヒ─ッヒッヒッヒッヒッヒッ!ハッピーかい、小娘?」
「……あ、貴方は?」
「38度2分
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