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ランス 〜another story〜
第3章 リーザス陥落
第105話 怒りと笑み
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 ただただ、考えるのは目の前の人間……ユーリの事だ。


――なぜ、この人間は向かってこれる? なぜ、ジル様を前に背を向け儂に向かってこれる?


 そう、ユーリは自分自身にも、そして何よりも全く臆さず《魔王ジル》と相対していた。
 全盛期ではなく、1000年と言う永き時、悠久の時を封じられた故に、その力は著しく消耗しているのだが、それでも《魔王》を冠するものに。
 人間と魔人の差は極めて高い。伝説と称される人間でさえも魔人の前には平伏し続けた。
 
 その中でも唯一の例外は、魔人カイト。その酔狂な魔人は、絶対無敵の己の結界を取り払い、純粋に力くらべ、技くらべを行い、結果敗北した一点を除けば、ただの人間が抗えた事など殆どない。

 そんな魔人よりもさらに上位に位置するのが《魔王》だ。

 その隔たりは何処まで高いのか魔人ノスにも皆目見当さえつかない。遥か頂き……天地程の力の差を持つ魔王を前に何故臆さない? 何故あっさりとこちら側へと向かってくる? それは背を向ける行為だ。魔王を前に背を向ける。……それも逃げるのではない。支援の為にだ。

 この人間には――恐怖はないのか……?


「後ろの魔王(ジル)が怖くないのか? って面してるな。……ノス」


 頭巾に殆ど隠されていた素顔から、ユーリははっきりと読み取っていた。
 簡単に心情を読まれる程、ノスは動揺し続けていた様だ。

「馬鹿かお前は。単純明快だろ。……オレは1人じゃないからだ。……頼れる仲間がいるからだ。勿論、そこにいるランスって男もな。無鉄砲でそれこそ単純なヤツだがこういう時はプラスにしかならん男だ」
「誰が仲間だコラ! 貴様はオレ様の下僕だろうが! それにオレ様はいつもいつでもプラス思考のポジティブシンキングだ!」

 あわや殺されかねない威圧感に圧されていたランスだが、しっかりといつもの調子を取り戻していた。……いや、取り戻す事が出来ていた。

「(認めんぞ。いや、認めたくない……か。なんだかこのユーリの童顔ぶりを見てたら、幾らか気が楽になった気がしたぞ。まぁ、好んでみる様なもんでもないが、笑えるから良しだな)がははは!」
「……おいコラ。 変な事考えてないか!?」
「がはははは!! 何を馬鹿な。オレ様はこんな大ピンチでも大チャンスに変える男! 今も尚、この状況を打開する策を練っている所だ」

 ランスは調子を完全に取り戻した。改めて握られた魔剣カオスを握りしめる。

「これは、あの美女をずーーっと封印してた剣だろ? ボンクラ、なまくらじゃない。つまりは、コイツで オレ様のスーパーな一撃を喰らわせればそれで済だ」

 間違えては無い。
 カオスは魔人を斬る事が出来る。……そして、魔王も例外ではないのだから。だが、ユー
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