第3章 リーザス陥落
第105話 怒りと笑み
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「臭いな……。……カオスは、いらぬ」
「は。仰せのままに……」
ジルからの命令。
その内容を訊いたユーリは、すかさず動いた。
狙いは――カオス。
あの剣が狙いなのだと言う事を理解したからだ。だが、ノスの方が位置的にも早く、更にランスもただ立ってるだけではない。
息つく暇もなく両雄はぶつかり合った。
「このデカ物め!! 死ねぇ!! ランスアタたたたーーーック!!」
カオスを手に、ノスに斬りかかったのだ。
魔人には無敵結界が存在する為、攻撃の類は一切通じない。それは今まででも実証済みだ。特に志津香に限っては、アイゼルとの一戦で嫌と言う程身に染みていた。
だが、その剣はノスに届く。それは先刻ランス自身が確認した事だった。
「……カオス。ジル様を永きに渡り封じた忌まわしき異物。……お前はいらぬ!!」
ノスはランスの剣を握り掴んだ。
万力で締め付けられたかの様に、剣は全く動かない。
「うぎぎぎぎぃぃ!! こ、この馬鹿力……が!」
ミシミシ…… と嫌な音が場に響く。それは刀身からの音である。もうほんの数秒、一秒あるかないかで カオスはへし折られてしまうだろう。
そんな刹那の時間。
「煉獄・斬光閃」
「ぬっ!?」
ユーリの放つ、斬撃がノスの側頭部を抉った。無敵結界はカオスにより斬られている為、今のノスには暫く結界を張り直す事が出来ない。つまり、どんな攻撃でも当たる。リ・ラーニングを使用するまでもなく。
「だから言っただろうが。此処にいらないのはお前らの方だ!」
「ッ!?」
一足飛び脚でノスの眼前へ。
斬光閃を放つと同時にユーリも移動をしていた。超接近し、そのままノスの手……否、指を斬り落とした。
「うぐぉッ……!!」
流石のノスも己の身体の一部を落とされる事態に見舞われるとは思っても無かった事と、もう遥か昔に忘れ去ったと言っていい 《痛み》を思い出し、表情がゆがんだ。
そして、斬り落とされた我が一部を見つめる。それが自分自身の指である事に気付くのには時間がかかってしまっていた。
「……なんだ? まさか 『人間に斬られる筈がない』とタカ括ってたのか。カオスの効果、お前も知らん筈がないだろうが」
ユーリはニヤリと笑った。
その言葉がゆっくりとノスの脳裏に刷り込まれた。
我が身を奪った初めての人間。恐らくは憤怒で満ちているだろうが、あまりの怒り故に 通り越してしまったのか、魔人の脳の回転が極まった。怒りをそのまま力へと変え、蹂躙する。本来の姿を明かし、この場の人間を根絶やしにしようと考えはしたのだが、主を前に醜く暴れるのには怒り以上の抵抗があった故にノスは実行しなかった。
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