暁 〜小説投稿サイト〜
ランス 〜another story〜
第3章 リーザス陥落
第105話 怒りと笑み
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・・・・・》があるからこそ、迷う事なく攻める事ができ、魔王相手にもその精神も十分持ちこたえる事が出来たのだ。

 この戦いの中で――皆もその域にまで辿りつくしかない。飲まれ続ければ、瞬く間に 弱い者から命を落としてしまうのは明らかだ。

 故に、時間を稼ぐ為にユーリは 付き合う事にした。己の名を魔王に告げる。

「―――ユーリ・ローランド」

 告げると同時に剣先をジルに向けた。
 その答えを訊いたジルは満足した、と言わんばかりにゆっくりと頷くと。

「ユー……リ、ロー、ランド。…………」
 
 ジルのその蒼白い身体に朱い瞳。しれらが妖しく光ったかと思えば、口許を歪ませて消えゆく様で、身体の芯にまで届く。まるで矛盾した声量でいった。



「……我の、ものになれ。……ユーリ、ローランド」



 それは何処かで訊いた事のある様なセリフだった。



『こ、これこそがイメージしてたヤツだ……! な、なんで あの時…… ぅぅ…… んゆぅ……』


 と、何処かで声が聞こえるかもしれない……いや、今は絶対に聴こえない。それに、以前訊いた事のあるセリフと、皆が思ったのだが あの時の様なリアクションを取れる者は誰一人としていなかった。

「…………」

 ノスだけは気が気じゃない様子だった。

 あの時と――ガイの時と同じだったからだ。

 嘗て人間としてこの魔王にして 主君のジルに刃を向け、そして魔人と化した。絶対の主である筈なのに、魔王としての時間が終わるや否や、また刃を向けた。その身体に刻んだ。刻むだけでは飽き足らず、魔剣カオスで封じた。1000年もの永き封印。思い返しただけでも腸が煮えくり返るノス。
 だが、憎悪をどれだけ滾らせようと、ジルの手前行動に移す事は出来なかった。主の言葉は、判断は絶対だから。それが例え歴史を再び繰り返そうとも。


 そして等のユーリは、無言のまま構えた剣を鞘へと仕舞った。

 その行動に皆が驚いたが、直ぐに杞憂だと悟る。

「オレが頷くと思うのか? 魔王ジル。……お断りだ」

 当然ながら拒否をしたから。



「…………」



 そんなユーリを真っ直ぐ見るジル。焦点さえ定かではなかった瞳がしっかりとユーリの姿を映していた。自分自身が視られている訳でもないのに、後衛にいるセルは震えが止まらなかった。

 神がついてくれている。

 何度も何度も自身に言い聞かせ続けるが、
 
「……お前はこの世にはいてはいけない存在。――もう 過去の存在なんだ」

 柄を握りしめ、構えた。

「……オレの友がいる国に、……人間の世界に仇名すな。そして、お前の存在はオレの目的の邪魔だ」

 ジルの口許は、軽くだが歪む。
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