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霊群の杜
両面宿儺
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どうして とメッセージを送って返信を待つ。…脇に挟んだ体温計がピピピと鳴って検温終了を知らせる。液晶に38・5℃と表示されていた。…まあまあの高熱だ。これ霊障かなぁ…などとぼんやり考える。
『この一帯を度々襲った飢饉が関係している』
―――食った人間を埋めたからか
『それな』
返信はすぐに来た。
『飢饉で死んだ、もしくは殺された無数の犠牲者が埋められていることをその一帯の年寄は知っていた。だから安かった』
―――今はそうでもないな
『風化したんだろうよ、風評が』
高熱が出ていることを自覚すると、しんどさが増す気がする。自分で始めたメッセージのやりとりなのに面倒になってきた。だが俺は確かめなければいけないことがある。
―――新しい死体を埋めたのは変態センセイか
『他に誰がいる。そもそもあの土地には人面樹が生じる要素が揃っていた。そこにあの変態が≪追肥≫したんだろ』
―――厭な云い方するなお前
『根は切り落としたんだ、しばらくは大人しいだろう。変態センセイがあの樹をどうするかは分からんが。ただもうあの病院に単身で乗り込むようなヘマをするな。次は死ぬぞ』
―――それだよ。お前、俺の鎌鼬を使ったな
礼は云わなかった。それが当然な気がしたのだ。
『お前だって俺の知識を使ったろ』
―――やっぱりか!


俺が薬袋に語った人面樹に関する知識は、やはり奉の持ち物だったのだ。俺は何故、奉の知識を借りるような芸当が出来たのだろう。熱のせいだけでなく、体の奥底がスッと冷える気がした。
―――どうして、そんな事が出来るんだ
『分からん。だがずっと昔から俺と≪結貴ポジション≫の人間は、ちょいちょいそういう事があった。前回、大戦で戦地に赴いたあいつの死に様も、俺は知っていた』
―――俺は、お前の何なんだ
……しばらく、返信が途絶えた。その間に俺は寝落ちてしまったらしく、奉の返信を読むのは翌朝になる。


夢を、見ていた。


異国の森林の奥地で俺は仲間の死体に囲まれていた。
それは上空から落とされた、たった一つの爆弾によって引き起こされた惨禍だった。それが故意に俺達を狙ったのか、目星をつけて何となく落とした爆弾が運命的に俺達の班を巻き込んだのかは知らない。それにどうでもいい。俺はもうすぐ死ぬ。
『そうか、もう死ぬのか』
時折、語り掛けてきた奉の声が、今日はいやに明瞭に聞こえた。
「あぁ…骨は拾いに来てくれよ」
『いやだよ面倒くさい』
「まじかお前…」
『お前が死んでも、またお前みたいなのがどっからか湧いてくるしねぇ、毎回毎回』
「…死んでいく友をそんな虫か何かみたいに…」
なんだこの状況。なんでこんなに悲壮感がないんだ。俺、これから異国で死ぬのに。
「…なぁ、なんで俺とお前は『こう』なんだろうな」
性格
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