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霊群の杜
両面宿儺
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された!?
「見たことない木だし、なんか成長が妙に早いし、一部の入院患者がちょっと不安がり始めててね。…あまり人が来ないエリアなんで、まだ変な評判は立ってないんだけど」
僕は割と好きなタイプの木なんで、出来ればそのままにしておきたくて…と呟き、薬袋はカップに口をつけた。
「ふぅん…」
変態センセイに普通の相談をされていることに、動揺を隠せない。俺は再度、カップを口元に運んで時間を稼いだ。
「………その木を見てみないことには、何とも云えないんだけど」
「そっか。じゃ、あとで見てもらおうかな!スコーン、取ろうか」
「いや、今行こう」
カップを置いて席を立つと、変態センセイが少し慌ててついてきた。




昼下がりの広い庭に、入院患者と思しき寝間着やジャージの人々がまばらに散っている。俺達の姿を認めると、彼らは会釈をしてきた。薬袋は微笑と優雅な会釈で返す。…堂に入った人格者っぷりだ。
「本当、広いんだな」
「んー、そうだね。この辺は土地が安かったから創始者が広めにキープしたんだよね…ただ、変な作りの庭園なんだ。どうも隅っこに行くほど入り組んでいるというか…」
「へぇ…隅っこは雑にしとくものなんだけどな」
よく整備された庭の一角に、不自然な暗がりが見えて来た。心なしか、この一角に近づくにつれ人が減っている気がする。
「…庭の手入れも、うちの店がやってるんだよな」
「うん」
「…じゃ、親父にでも相談すればよかったのでは」
ここまで連れてこられてから気づく俺も俺だが。
「うーん…そう簡単な問題でもないんだよ」
辺りを見回してみると、あの一角に通じている道の所々にカラーコーンが立っている。『立ち入り禁止』などの表記はないのだが、何となく近寄りにくい雰囲気をカラーコーンが醸し出しているというか…。
「…で、ああして人が何となく近寄らない工夫をしている、と」


―――何かキナ臭い匂いがしてきやがった。


「ほらこっちだよ!植え込みの裏側に回り込んで!」
カラーコーンで仕切られた歩道から完全に死角になっている辺りに『それ』は生えていた。
最初、俺はそれを橘の亜種かと思った。ぎょっとする程紅い葉はさておき、遠目には葉の質感と実の付き方が似ていたから。だから俺はとても不用心に近づき……小さい悲鳴を漏らしてしまった。
「ねっ、珍しいでしょ。このキンカンっぽい実がさ、わりとシャレにならないレベルで」


人の顔、なんだよねぇ…と呟いて、薬袋が微笑んだ。


紅い葉に隠れるように鈴なりに実った異形の実が、一斉に笑った。…肩の力が、急速に抜けていくのを感じた。所詮、この男が俺に普通の相談をする筈がないのだ。蛇の巣に単独で踏み込んだ俺が馬鹿だった。茫然と立ち尽くす俺の傍らに、薬袋が回り込んだ。
「この木、なん
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